JUMPの闘病生活。5 (ページ1)

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勝負ページ1

伊野尾先生サイド

「「先生、泣かないで」」

侑李の声に重なった、聞きなれた声。

いつの間にか目を覚ました涼介が、顔を歪めながらこちらを見ていた。

侑李「涼介！平気？大丈夫？」

侑李が不安そうな顔で涼介を覗き込む。

涼介「だい、じょーぶ」

絶対大丈夫じゃない。

そう思った俺は涙をぬぐって「どこが痛い？」と涼介に訊く。

涼介「んっと、お腹と、腰も、ちょっとだけ」

伊野尾先生「わかった。もう少し、我慢してな」

俺は、いつも使っているものより作用の強い鎮痛剤を入れた。

涼介「俺は、移植、受けたいって、ずっと思ってる」

辛そうに、でもはっきりとそう口にした涼介。

侑李「聞いてたんだ」

泣くのを必死にこらえている侑李が、目に涙をためながら震える声で言う。

涼介「んな顔、しないで？」

「俺、大丈夫だからさ」と付け足して、涼介は笑った。

痛いはずなのに、苦しいに決まっているのに、笑ったんだ。

涼介「先生も、俺以外の、患者に、そんな顔したら、ダメ、だかんね？」

涼介は、侑李の頭を撫でながら、俺の手も取って優しく握ってくれた。

伊野尾先生「ごめん」

涼介「先生は、医者失格、なんかじゃない。先生は、すごぉい、お医者さん」

―――――伊野尾先生は、すごいんだね！

幼い頃の涼介が脳裏に蘇る。

―――――俺、伊野尾先生の手になりたい！たくさんの人を助けてあげる手！

あの頃の涼介は、きっと病気のことを理解していなかった。

白血病は１年間で百万人に六、七人程度しかならない病気なのに、その七人に入ってしまったことがどれだけ不幸なのかも、おそらく理解していなかっただろう。

子供には難しすぎるんだ、この問題は。

中学生だってまだ子供なんだから、俺が親の代わりになってやらないと……。

涼介のおかげで、医者として、覚悟が決まった気がする。

伊野尾先生「ありがとう。俺、頑張るよ。だから、一緒に頑張ろうな」

涼介「うん、頑張ろう」

涼介はそう言って、俺の手のひらに自分の手のひらを重ね合わせた。

涼介「先生、お医者さんの手してる。かっこいいよ」

伊野尾先生「変わんないな、昔から」

涼介は「そおかな？」と言って、首をかしげる。

鎮痛剤が効いてきたのか、大分表情が明るくなっていた。