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家族と相棒 ページ10

侑李サイド

検査結果が出てから、3日後のこと。

僕は退院することになった。

僕のゲーム機や漫画、小説などを、退院祝いとして伊野ちゃん先生にもらったリュックに詰める。

涼介「寂しくなるなぁ。なんでここ4人部屋なのに誰も来ないんだろう」

侑李「しょうがないよ。僕がお母さんだったら、自分の子供は個室部屋かもっといい部屋に入れるもん」

涼介「きれいなのにな、この景色も」

侑李「うん。すごく小さくだけど、海が見えるしね」

涼介「侑李、病院に来るのは、たまにでいいからね」

さっきまで「寂しい」とか言っていたくせに、涼介は急にそんなことを言う。

侑李「なんで?」

涼介「大変だろうからさ。勉強も部活も。俺のことは、その次でいいから」

侑李「うん、わかったよ」

僕がそう言うと、涼介は少し俯いた。

でも、そのあとに「毎日来るから」と言うと、涼介は顔をあげた。

涼介「……何もわかってないじゃん。たまにでいいの」

そんなことを言っていても、僕が「毎日来るから」と言ってから、涼介はやけに嬉しそうだ。

侑李「勉強と部活が終わってからすぐ来ればいいってことでしょ?」

涼介「……うん、ありがと」

涼介の顔がなぜか真っ赤になっている。

僕のものを再びリュックに詰めると、コンコン、とノックの音がして、返事をする前に扉が開いた。

侑李「薮ちゃん先生!」

薮先生「よ! 退院おめでとう。今日の夜だろ?」

侑李「うん。ありがとう」

薮先生「伊野ちゃん、今日は珍しくだらだらせずに仕事してるから、早く帰れると思うよ」

侑李「そっか。感謝しないとだね」

薮先生「いや、だらけないのが普通だからね? 毎日今日くらいちゃんとしてほしいよ」

涼介「そんなにちゃんとしてないの? 伊野尾先生」

薮ちゃん先生が「うん」と言いながら、僕に封筒を渡す。

侑李「何これ」

薮先生「退院祝い」

「開けてみなよ」と薮ちゃん先生に言われて封筒を開ける。

中には5万円が入っていた。

侑李「こんなにいいの?」

薮ちゃん先生「医者の給料なめるなよぉ?」

侑李「わーい! ありがとう、先生」

涼介「薮先生、俺のは?」

涼介が上目遣いでおねだりをしている。

薮ちゃん先生は「はいはい、わかりました」と言って、ポケットになぜか入っていた財布から1万円を出した。

涼介「ありがとぉ、先生」

涼介がにっこり笑う。

薮ちゃん先生は、「じゃあ夜までいい子にしてろよ」と言って部屋を出た。

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作者名:J | 作成日時:2020年5月20日 11時

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