JUMPの闘病生活。３ (ページ7)

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家族と相棒ページ7

涼介サイド

侑李「涼介、ちょっと外出られる？」

涼介「うん。中庭？」

侑李「ううん。屋上行こうかなって。涼介、行ける？」

涼介「行けるよ」

ベッドから降りた涼介に、僕は「ちょっと待って」と言う。

僕専用のタンスから取り出したのは、スマホだ。

これは伊野ちゃん先生からもらったもので、ナースコールが押せない時に先生に直接連絡するためのもの。

伊野ちゃん先生がスマホを買い換えたから、古い方を借りたんだ。

僕はそれをズボンのポケットに入れる。

侑李「おまたせ。行こっか」

涼介「うん」

僕たちは長い廊下を歩き出す。

窓から夕陽がさして、廊下にオレンジ色の光が漏れた。

歩きながら、お話をする。

涼介「部屋から出るの、なんか久しぶり」

侑李「僕も。屋上に行くのはもっと久しぶり」

涼介「そーだね」

侑李「時間ってさ、ずっと流れてるんだよね」

僕がそう言うと、涼介は「何？急に」と笑った。

侑李「涼介は辛いかもだけど、ずっとこのままがいいって思った。ずっとさ、子供のままで。先生と涼介と病院で過ごしたいって」

くだらない会話だって、ぱっとしない毎日だって。

全部、ずっと続いてほしい。

涼介「俺も。こんな体でもいいからさ、みんなで笑いたい。どんどん死が近づいて来るのが怖いんだ。それは、病気で死ぬのもだけど、年を取って死んじゃうこと」

侑李「僕たち、世界に置いてかれている気がする。学校行けてないし、そのせいで人生経験が少ないから」

涼介「うん、俺もそう思ってた」

侑李「このまま大人になっちゃったら、後悔すると思うんだ。先生たちのことも、ずっと会わなかったら忘れちゃうかもしれない」

涼介「忘れたくないね。みんな、優しいからさ」

そんな会話をしていると、いつの間にか屋上のすぐ前まで来ていた。

僕たちは、どちらからともなく走り出す。

ドアノブを２人で回した。

風が頬を撫でる。それが心地よかった。

僕は、屋上の端まで一気に走った。

体力は相変わらずなくて、はぁ、はぁ、と息が切れる。

僕は膝に手をついて、息を整える。

「そんなに走るからだよ」と言った涼介は、ゆっくり歩いてこっちに来る。

涼介が僕の隣に来る前に、僕は涼介のいる方に振り向いた。

涼介「どーした？大丈夫？」

侑李「うん。あのね、僕、思うんだ」

涼介「何を？」

侑李「僕、こんなに幸せでいいのかなって」

涼介も走り出した。

涼介「俺も、こんな幸せでいいのかな」

涼介は大きな声でそう言った。