JUMPの闘病生活。３ (ページ40)

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光と闇ページ40

侑李サイド

侑李「涼介、ご飯食べよ……」

扉を開きながらそう言うけど、部屋に涼介はいなかった。

涼介だけがいないわけじゃなくて。

涼介のベッドごと、消えていた。

侑李「あれ……？」

そんな言葉が口から漏れる。

悪い予感がして、僕は部屋を出て病院中を探して回った。

中庭にも、他の階にも、屋上にもいなくて、考えられる場所は、１つになった。

探したくても、探せない場所。

入ることが許されない場所。

集中治療室――ICUだ。

僕が走り出すと、後ろから「侑李！」と名前を呼ばれた。

侑李「薮ちゃん先生……」

薮先生「涼介な、ICUにいるから。今から、会いに行くか？」

侑李「うん」

薮ちゃん先生は、いつもよりゆっくり歩く僕のペースに合わせてくれた。

２人で歩いていると、薮ちゃん先生が口を開いた。

薮先生「3時間くらい前かな、かなりの量の鼻血出しちゃってね」

頑張ってるのにな、と薮ちゃん先生は呟いた。

侑李「頑張っても、ダメなのかな」

薮先生「……」

侑李「あ、ううん。何でもないよ、ごめんね」

薮先生「いや、謝らなくてもいいよ」

そう言って、僕よりも申し訳なさそうな顔をする薮ちゃん先生を見ていると、後悔した。

なんで、「頑張っても、ダメなのかな」なんて言ってしまったんだろうって。

なんで、声に出しちゃったんだろうって。

僕はもう一度「ごめん」と言って、それっきり口を開かなかった。

ICUに着くと、薮ちゃん先生は、涼介のベッドの位置だけを僕に教えて、関係者しか入れない奥の部屋に入っていった。

いろんな人の視線を感じて、少し怖い。

僕は制服の袖をギュッと握る。

早く涼介のところまで行かないと……。

さっきまでゆっくり歩いていたのに、いつの間にか早足になっていた。

あともう少し。そこまでいけば、涼介がいる。

僕は逃げるように涼介のベッドの隣に行く。

侑李「涼介……」

眠っている涼介の頭を撫でて、手を握る。

涼介の手からは体温が伝わってくるのに、僕がどれだけ強く握っても、握り返されることはなかった。

侑李「なんでっ……」

涼介の手の甲に、ポタリと僕の涙が落ちた。

侑李「りょおすけぇ、りょーすけ……」

僕は、涼介の胸に顔をくっつけた。

いつもみたいに抱き締めてよ。

「俺は大丈夫だよ？」って、頭撫でてよ。

トクン、トクン、と聞こえてくる涼介の心臓の音。

涼介は生きている。涼介はここにいる。

僕は、そう何度も繰り返し言い聞かせて、涙が止まるのを待った。