JUMPの闘病生活。３ (ページ29)

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光と闇ページ29

涼介サイド

伊野尾先生「いくよ。辛くなったら言ってね」

涼介「……うん」

俺は覚悟を決めてからそう返事をして、伊野尾先生の目を見る。

点滴に繋がれた新しいパック。

今、俺は薬を変えたのだ。

効果のなかった薬から、今よりも強い副作用を伴うが、効果が出るかもしれない薬に。

今の俺にとって、本当は、薬なんてどうでも良かった。

それは体ではなく、心の話。

辛い思いをするだけで治らないとわかっていて、誰が自ら「薬を変えたい」というのだろうか。

最近は、このまま死んでいくのもいいんじゃないかな、なんて思い始めている。

先生たちは、侑李にも薬のことを伝えた方がいい、と言っていたけど、俺は言わなかった。

俺のせいで侑李に迷惑をかけるのも、弱った俺を見られるのも、嫌だったからだ。

伊野尾先生「大丈夫？」

心配そうに俺の顔を覗き込んできた伊野尾先生は、「めまいとかする？」と続けて訊いてきた。

涼介「大丈夫だけど？」

伊野尾先生「ならいいんだけどね。一点を見つめてボーッとしてたから、大丈夫かなって思ってさ」

涼介「……ちょっと考え事」

そう答えた俺を見て、伊野尾先生はまた心配そうな顔をしていたけど、それに気付かないふりをした。

俺、最近変だ。

俺なのに俺じゃないような、誰かに体を乗っ取られているような、不思議な感覚。

自分を見失っていく俺と、新たな自分をどんどん見つけていく侑李。

今までずっと一緒だったのに、正反対になった俺たち。

胸がモヤモヤする。

それはきっと、どんどん開いていく差に焦っているから……いや、違う。

俺は慌てて口元に手を当てた。

熱いものが食道を逆流してくる。

―――――副作用だ。

涼介「ううっ……はぁ、……っ、がはっ、うっ……」

伊野尾先生「涼介！それ持てるか？」

俺は小さく何度も頷いて、バケツを持った。

口腔内に広がる、胃酸の味。

鼻の奥が、ツンっと痛む。

それのせいで、また気持ち悪くなる。

俺が口に手を当てた瞬間に、伊野尾先生がバケツを置いてくれたからベッドは汚れなかったけど、手が汚れた。

伊野尾先生「涼介、そのままでいいからな。無理したらダメだよ」

伊野尾先生の優しい声。

なぜか脳裏に、あいつの顔が浮かぶ。

―――僕はどんな涼介も好きだよ？

ずっと昔から、俺と侑李は一緒だった。

俺は侑李のために生きて、侑李は俺のために生きてくれた。

今までの俺はどうかしていたな。

――――俺、まだ生きたいよ。侑李。