侑李の学校生活 ページ26
涼介サイド
侑李「……でね、そのとき海って言う子が話しかけてきてくれてね、友達になったんだよ!
その子、性格が涼介と似ていて、すごくいい子なんだ。『わからないところがあったら、どんどん訊いてね』って言ってくれてさ。
海はサッカー部に入ってるみたいだからね、今度一緒に行くことになったんだよ。しかもその……」
学ランを着た侑李が、目を見開いて嬉しそうに話している。
こんなに話す子だったっけ? と思うほど、ジェスチャーを交えながらベラベラと話し続けている侑李。
大阪の芸人さんくらい、言葉がどんどん出てくる。
俺は、侑李が遠くにいってしまったような寂しさと、その何十倍もの嬉しさを感じた。
侑李「涼介にも会ってほしいなぁ。海、本当に涼介にそっくりだから」
ようやく黙ったかと思えば、侑李は頬杖をついて学校のある方角をボーッと眺めた。
その後目を閉じて、口角をきゅっとあげた。
涼介「良かったね。友達できて」
侑李「うん!」
侑李が大きく頷いたとき、部屋の扉がガラガラと音を立てて開いた。
「よっ!」と、有岡先生が片手をあげて登場する。
有岡先生「良かったなぁ、友達出来たのか」
どうやら先生は扉の向こうで侑李の話を聞いていたらしい。
侑李「あ、勉強もわかったよ! 授業、大ちゃん先生とは違う雰囲気だったから、少し緊張したけど」
有岡先生「おー、すごいじゃんか」
侑李「それと、これからリハビリ室行ってもいい? 部活とかもやりたいし、体力つけないとな! って思っていてさ」
有岡先生「多分いいんじゃない? じゃんじゃん行きなよ」
侑李「ありがとー」
侑李は甘えた声でそう言った。
その声は今までと全く一緒のはずなのに、俺の聞きなれた声のはずなのに。
―――――――――俺の知ってる侑李じゃない。
知らない間に、俺がこうして病院にいる間に侑李はどんどん大人になっていって。
でも俺はずっと
兄弟で差が広がっていくのも、俺よりも侑李のことを知っている人ができてしまうのも、すごく怖かった。
侑李にとって、俺がいちばんじゃなくなったそのときには、きっと侑李は、今まで退院していった子達のように……。
俺は、頭のなかに浮かんだそれを振り払った。
そんなことない、と心のなかで何度も繰り返したけど、俺は、どうしようもない孤独感に支配されていた。
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作者名:J | 作成日時:2020年5月20日 11時