JUMPの闘病生活。３ (ページ22)

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家族と相棒ページ22

伊野尾先生サイド

侑李が泣きそうになっている。

肩が少し震えていて、しきりに上を向いて。

伊野尾先生「痛い？」

侑李「……ううん、違う」

伊野尾先生「じゃあ、怖い？」

侑李「うん……」

うつむいた侑李の目から、ポロっと涙が溢れる。

でも、それ以上は涙を流さなかった。

侑李「まだ、僕の骨髄をあげるのはダメなの？」

伊野尾先生「ちょっと難しいかもね」

そう言うと、侑李は唇を固く結んだ。

俺はわかっていた。

何度も何度も侑李は「僕のはダメなの？」と聞いてきて、俺は毎回「ダメなんだ、ごめんね」と答えていたけど。

その度に、俺がそう答える度に、侑李を絶望させているのだと。

わかっていたのに、そう答えるしかなかった。

それが現実なのだから。

再発しやすい状況におかれている侑李の骨髄を涼介にあげたとしても、移植が無駄になってしまう可能性がある。

もしかしたら、涼介が移植に耐えるための体力を使い果たし、寿命が縮むかもしれない。

伊野尾先生「侑李の時みたいに、ある日急に見つかるかもしれないよ？」

侑李「そうだね。諦めちゃ、ダメだね」

侑李はニコッと笑った。

でも俺には、何故か侑李が無理して笑っているような気がした。

「諦めたら試合終了らしいもんね」と付け足した侑李。

涼介も侑李も頑張ってるのに、俺が諦めてどうすんだよ。

侑李の「諦めたらダメだよね」という言葉を聞いて、俺はそう思った。

侑李「涼介のところ、そろそろ戻るね」

伊野尾先生「大丈夫？」

侑李「うん！ありがと」

侑李はそう言って、扉を開けた。

そして俺が部屋を出るまで、扉を開けておいてくれた。

優しい子だな、と感心しながらも、怪我人に気を遣わせていることに少し申し訳なくなる。

侑李「伊野ちゃん先生。今度病院がお休みのとき、お出かけしよーね」

伊野尾先生「別にいいけど。涼介はいいの？」

侑李「もちろん涼介のところに行った後での話だよ。午前中に病院に来て、午後からとかでもいいからさ、どこか行こう？」

俺が「いいよ」と言うと、侑李は「やった！」と言って微笑む。

その笑顔が、窓から差し込んできた夕日のオレンジ色に照らせれて、とてもきれいだった。