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家族と相棒 ページ1

侑李サイド

伊野ちゃん先生からもらった漫画を読んでいたとき。

伊野ちゃん先生が部屋に入ってきた。

先生は休憩時間を全部、僕の部屋にくる時間にあててくれる。

侑李「先生、昨日はありがと。涼介治してくれたでしょ」

伊野尾先生「俺じゃないよ。光と大ちゃん」

侑李「じゃあ今度二人にあったらお礼言っといて」

伊野尾先生「わかった」

伊野ちゃん先生は、椅子に座った。

侑李「……先生、涼介どうなるの?」

あまり暗くなりすぎないように、いつも通りの声のトーンでそう聞くと、先生は僕の頭を撫でた。

伊野尾先生「俺が治すから」

侑李「そうじゃなくて。病気のこと、ちゃんと教えて」

僕だって、自分の病気のことは理解している。

涼介も僕と同じ病気なのだから、全部わかる。

伊野尾先生「進行してるかもしれない」

侑李「……そっか」

あまり驚きはなかった。

心のどこかでもうわかっていたことだから。

侑李「ありがとね、教えてくれて」

僕がそう言うと、伊野ちゃん先生は悲しそうな目をした。

伊野尾先生「無理しなくていい」

伊野ちゃん先生は、僕を抱き締めた。

白衣から、伊野ちゃん先生のにおいがした。

伊野尾先生「悲しいときは泣いてもいいから」

目にたまった大粒の涙が、頬を伝わずに下に落ちた。

僕の涙が、伊野ちゃん先生の白衣を濡らしていく。

ポロポロと溢れてくる涙を、僕は止められなかった。

侑李「涼介、死ん、じゃうの?」

伊野尾先生「俺が絶対死なせない」

侑李「嫌だよ、涼介が、死んじゃっ、たら。伊野ちゃん、先生、治し、てね」

伊野尾先生「治すから。絶対にふたりとも治す」

侑李「涼介が、死んだら、僕も、死ぬ」

伊野尾先生「大丈夫。俺が守る」

先生の声は、いつもより低かった。

僕を包む腕は、力強い。

侑李「守ってね、涼介を」

伊野尾先生「ああ、約束する」

伊野ちゃん先生は、僕から体を離して、僕の頭を撫でた。

伊野尾先生「俺、あとちょっとで行かないとダメだから、泣くの止められる?」

侑李「うん」

僕は目を閉じて、深呼吸する。

伊野尾先生「ふたりとも大人にするよ」

侑李「うん、信じてる」

僕が笑うと、先生は安心したというように笑って、「じゃあね。また来るから」と部屋を出た。

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作者名:J | 作成日時:2020年5月20日 11時

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