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家族と相棒 ページ15

侑李サイド

涼介の病室の目の前まで来た僕は、1回深呼吸をしてから扉を開ける。

涼介「侑李、待ってたよ。はい、そこ座って」

涼介のベッドの隣には椅子がおいてある。

僕は「うん」と言ってその椅子に座った。

涼介「可愛い、その服似合ってる」

侑李「え、これ? ありがと」

このブカブカな服のどこがいいのか僕にはよくわからないけど、涼介は「可愛い」を連呼している。

目を見て何度も言ってくるから、恥ずかしくなってきた。

涼介「侑李の学ラン姿、見せてね」

侑李「うん、学校行き始めたら毎日制服で来るから」

涼介「えへへ、楽しみだなぁ」

涼介はそう言って天井を見た。

目がキラキラと輝いている。

侑李「涼介もだよ。涼介も学ラン着て一緒に登校しようよ」

僕がそう言うと、涼介は僕の目を見て一瞬固まった。

そして、その後すぐ俯いて自虐的な笑みを浮かべる。

なんでそんな顔するの?

そんなこと、聞くまでもなかった。

だから、その言葉は心の中にしまっておいた。

涼介「侑李、俺な、その……」

涼介が神妙な面持ちでそう話し始めたとき、コンコン、とノックの音が聞こえる。

涼介「はーい」

扉が勢いよく開き、肩を上下させた大ちゃん先生が病室に入ってきた。

有岡先生「なんで、侑李、いるの?」

侑李「なんでって、伊野ちゃん先生から聞いてないの? それに、毎日来るって言ったじゃん」

有岡先生「そうじゃ、ない……」

涼介「先生が侑李をつれてきてくれる前に、侑李が自分で来ちゃったね。先生が子供たちと話してたから」

涼介のその一言で、僕は全てを理解する。

なんでいるの? って、そういう意味だったのか。

変な意味ではなかったことに、少し安心した。

涼介「有岡先生、体力ないね」

有岡先生「おま……全力疾走したんだぞ?」

大ちゃん先生はそう言って椅子を出し、それに座った。

涼介「侑李だって走ってきてくれたもんね?」

侑李「ねー!」

有岡先生「……子供と大人を、一緒にするな」

その言葉を聞いて、涼介は「ちぇっ」と舌打ちのような声を出す。

侑李「そういえば、涼介さっき何か言いかけたじゃん?何だったの?」

僕は涼介の顔を覗きこんでそう尋ねる。

涼介は「なんでもないよ、忘れて」と言ってごまかした。

でも、僕は全部気がついている。

涼介の病気は進行していて、それを涼介は知っている。

多分涼介は生きることを諦めているのだ。

諦めるな、なんて言えないよ。

僕だってずっと諦めていたから。

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作者名:J | 作成日時:2020年5月20日 11時

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