JUMPの闘病生活。 (ページ25)

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母親の記憶(ここな様リクエストです) ページ25

涼介サイド

目を開けると、病室には薮先生がいた。

薮先生はニコッと笑って「おはよー」と言った。

いつもは大好きな笑顔だったのに。

掛け布団の下で、震える右手を左手で押さえていた。

背中を冷たい汗が流れた。

薮先生「りょーすけー、平気かな？」

涼介「……うん」

薮先生「そっかぁ」

薮先生は、俺から遠い位置にいてくれた。

おそらく、伊野尾先生か有岡先生から話を聞いていたのだろう。

薮先生「りょーすけー、教えてもいいってことだけ、教えてほしいんだけどさ。俺たちが怖いの？」

怖いよ。でも、嫌われること、暴力を奮われることの方が、もっと怖い。

薮先生「俺は怒らないし、ほんとのこと言ってくれればいいよ。なにも考えずに言ってね」

涼介「ほんとに？」

薮先生「本当に」

薮先生のその言葉は、信じてもいいのかな。

涼介「怖いよ」

信じきれていない自分に気づきながらも、そう言った。

俺は今、薮先生は信じてもいい人なのか、試そうとしているのだと自覚もしていた。

薮先生「そっか。言ってくれてありがとな」

ただ喋っただけなのにお礼を言われるなんて、思ってもいなかったから少し驚いた。

でも、それくらい優しくしてくれるという事実は、今の俺が異常なのだと、そう告げていた。

薮先生「そろそろさ、涼介の病室に戻らない？嫌だったら、別にいいんだけど」

さすがに、迷惑なんだろうな。

涼介「……うん。戻るよ」

結局、侑李と裕翔に会いたくない気持ちよりも、迷惑をかけたくないという気持ちが勝った。

薮先生は「じゃ、行こっか」と言って、扉を開けてくれた。

心臓がドクドクと大きな音を立てている。

もう少し、寝てたら良かったな。

目が覚めたことに、後悔をする。

裕翔、ひいてないかな。

あんなとこ見せられたら、裕翔も怖いんだろうな。

侑李はひいてはいないだろうけど、今まで通り、仲良くしてくれるのかな。

兄弟の縁とか、切られないかな。

俺は病室を出て、薮先生と一緒に廊下を歩く。

いつも通っている廊下が、すごく長く、暗く感じた。

侑李たちがいる病室のドアの前に立ったら、緊張が増してきた。

額に大量の汗が出てきたから、手の甲でぬぐった。

薮先生は、何も言わずにただ見守ってくれた。

ふぅ、と一息ついてから、コンコンと扉をノックした。

「はーい」と聞きなれた声がして、全身から汗が滲み出た。

俺は、勇気を出して、扉を思いっきり開けた。