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双子の絆 ページ28

侑李サイド

涼介「ねえ、裕翔どうしたの?」

ああ、もう限界か。

僕は、裕翔が抗がん剤治療で別の部屋に行ったことを涼介に隠していた。

でも聞かれたから、しょうがない。

侑李「抗がん剤治療するから。だから、違う部屋に行っちゃったよ」

涼介「抗がん剤か。きついだろうな」

僕は「だね」と返事をした。

僕たちは慢性の白血病だから、慢性期でいられるための治療をする。

だから抗がん剤治療とは違って、そんなに副作用はない。

涼介「移植が終わるまで戻ってこないのかな」

侑李「さあね。今度先生来たら聞いてみよ」

涼介「そうだな」

そんな話をしていると、ガラガラと扉が開いた。

伊野ちゃん先生が、目を擦りながら部屋に入ってくる。

侑李「伊野ちゃん先生! 待ってたよ」

伊野ちゃん先生は、「おう」と眠そうに言った。

涼介「先生、どうしたの?」

伊野尾先生「侑李に話がある」

急に真剣に言われたから、ビクッとしてしまう。

侑李「な、なに?」

僕は、覚悟を決めてそう聞いた。

伊野尾先生「あのね、薬を変えようかなって思うの」

涼介「何に変えるの?」

僕の代わりに、涼介が聞いてくれた。

伊野尾先生「ニロチニブっていう薬」

にろ、ちにぶ?

一体何なのでしょう、その薬……?

隣では、涼介も口をポカンと開けている。

伊野尾先生「わかんないよな。基本的にはね、だいたい今の薬と一緒だよ。今の薬より白血病細胞を早く減らせるんだ。でも、副作用が、ちょっと出るかもしれない」

侑李「副作用、か……」

涼介「副作用って具体的に何があるの?」

涼介は、僕より必死になって聞いてくれている。

伊野尾先生「発疹、頭痛、あと吐き気、貧血、発熱、めまいとかかなー。人によって違うからわかんないし、副作用を抑える支持療法ってのもある」

涼介「なにそれ。なんでそんな薬なの? もっと違うやつないの?」

僕よりも、涼介の方が必死になっていた。

でも―――

侑李「いいよ、僕やるよ。伊野ちゃん先生、その薬にしてよ」

涼介「ゆうりぃ……」

侑李「やだなぁ、なんて顔してんの? 僕死ぬ訳じゃないんだよ? だいじょーぶ」

自分でも、大丈夫かなんてわからなかった。

それでも、自分にそう思い込ませるためにもそう言って笑って見せた。

伊野尾先生「侑李はえらいな。じゃあ、早速変えてみようか」

伊野ちゃん先生は、今僕の腕に刺さっている針を抜いて、新しい針を入れた。

僕の胸が、不安でいっぱいになっていくのを感じた。

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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