家族と相棒 ページ49
伊野尾先生サイド
涼介の病室の前まで来たとき、光が廊下に出てきた。
伊野尾先生「光」
俺と反対の方向に進もうとした光を呼び止める。
八乙女先生「何? 伊野ちゃん」
伊野尾先生「涼介、大丈夫?」
八乙女先生「え? あ、うん。今は落ち着いてる」
今は、ってことは、さっきまでは大変だったんだろう。
八乙女先生「ってか、何で知ってるの?」
光がそう聞いてきたから、俺たちは休憩スペースで話をすることにした。
俺は、侑李の体にも涼介と同じことが起きたのだと伝える。
八乙女先生「なるほどな……。一致してるから、偶然ではないと思うけど」
伊野尾先生「不思議な話だけど、現実なんだよ」
八乙女先生「でも、そうだとしたらさ、いろいろおかしくない?」
伊野尾先生「どこが?」
八乙女先生「侑李が移植手術受けてるとき、涼介には何もなかった。それに、侑李が治ってるのなら、涼介も治るはずじゃない?」
伊野尾先生「侑李いわく、白血病になってからはそんなに影響されなくなったらしいけど」
八乙女先生「……ふたりがほぼ同時に白血病になったのは、こういうことなのか?」
伊野尾先生「でも、それはわからないでしょ?」
ふたりが白血病だと判明したのは、家族がふたりを病院に連れてきたからではない。
道路で倒れているのを、たまたま通った人が救急車を呼んだのだ。
いろいろな検査を受けたところ、ふたりとも白血病だとわかった。
それと、両親に捨てられたということも。
すでに発病していたから、詳しい時期はわからない。
ただ、病気の進行が同じくらいだったから、同じ時期だと言っているだけなんだ。
八乙女先生「そうか」
伊野尾先生「でも、可能性はあるかもね」
八乙女先生「まぁ、そんなこと言い出したら、きりがないよね」
ちょうど会話が途切れたとき、電話がなった。
伊野尾先生「ごめん、俺、行くわ」
八乙女先生「うん」
俺はそう言ってその場を離れる。
廊下を歩きながら、考えた。
なぜ、今まではなかったのに急に影響されるようになったのか。
それは、何かを意味しているのか。
侑李が移植を受けたこととは関係しているのか。
頭の中には、バラバラのピースがある。
でも、パズルは完成しない。
1枚だけではなく、何枚も足りていないのだ。
「伊野尾先生、ちょっといいですか?」
研修中のナースに声をかけられた。
このままだと仕事に支障が出る。
俺は、頭の中にあるパズルのピースを消して、仕事に集中した。
154人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時