JUMPの闘病生活。2 (ページ45)

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家族と相棒ページ45

有岡先生サイド

八乙女先生「どうした？」

涼介の意識がなくなってすぐ、光くんが来た。

有岡先生「鼻血出して倒れた。さっき意識が……」

八乙女先生「熱もちょっとあるな。とりあえず点滴」

慣れた手つきで処置をする光くんとは対照的に、俺は涼介の鼻をタオルで押さえることしかできなかった。

八乙女先生「大ちゃん？落ち着いて。涼介、鼻血止まった？」

俺は、タオルをゆっくり離した。

有岡先生「……止まった」

八乙女先生「良かった。でも、結構出たね。輸血するか」

真っ白だったタオルは、ほとんどが赤く染まっていた。

有岡先生「俺、どうしたらいい？」

八乙女先生「あとは俺だけでもやれるから。手、洗ってきなよ」

有岡先生「うん」

俺は血がつかないように肘でドアを開け、トイレに向かう。

手洗い場もあるけど、トイレの方が近いから。

水道の蛇口をひねると、水が溢れ出す。

手についた血が流れて、洗面台に赤い水が落ちる。

蛇口を逆にひねり、手の水をきってから、病室に戻った。

有岡先生「終わったの？」

光くんは、涼介のベッドの横に椅子を出し、座っていた。

八乙女先生「うん。大ちゃんも座りなよ」

そして、その隣にもう１つ椅子があった。

有岡先生「ありがと」

八乙女先生「ううん、びっくりしたね」

有岡先生「うん」

八乙女先生「大ちゃんのおかげだよ、ありがと」

有岡先生「そんなことないよ。俺、何すればいいのかわかんなくなった」

八乙女先生「そんなもんだよ、みんな。急に倒れられたらさ」

有岡先生「怖くなった、少しだけ。さっきまですごい元気だったから」

八乙女先生「俺も。俺の知らない間にいなくなっちゃいそうで怖い」

光くんは、涼介の手を握っていた。

八乙女先生「涼介な、たぶん進行してる」

あまりにも突然だったから、受け入れられなかった。

有岡先生「なんで？」

八乙女先生「お腹とか、腰とか、痛いって言ってた」

大ちゃんなら、わかるだろ？と光くんは付け足した。

肝臓や脾臓が膨張していることによって、痛みが生じる。

子供の頃から、何度も読んでいた。

医者だった父さんの医学書の中に、書いてあった。

有岡先生「検査、したの？」

八乙女先生「結果待ち」

有岡先生「そうか。侑李には言ったの？」

八乙女先生「言えるわけっ……」

有岡先生「だよな」

せめて、結果がわかる前までは。

まだわからないふりをしていたい。

知らないふりをしていたい。

その気持ちは、同じだった。