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家族と相棒 ページ41

侑李サイド

目を開けると、伊野ちゃん先生の顔が見えた。

伊野尾先生「ゆうり? だいじょーぶかな?」

侑李「うん」

伊野尾先生「大丈夫じゃなくなったらちゃんと言ってね」

侑李「うん。涼介は?」

伊野尾先生「うーん、今日は我慢してね」

侑李「いじわる」

伊野尾先生「でも、せっかく上手くいったのに、感染症とかになっちゃったら嫌でしょ?」

その言葉で、本当に治ったんだなぁ、と思った。

もう、高熱も、貧血もなくなるんだなぁって。

でも、それと同時に、こうも思った。

涼介は、まだ辛いままで。

僕だけが、楽になるんだって。

嬉しさよりも、罪悪感の方が強かった。

伊野尾先生「侑李の状態が落ち着いたら、侑李から会いに行けるから」

侑李「うん」

伊野尾先生「そんな顔すんなよぉ、俺がいるからさ!」

伊野ちゃん先生は、おどけた口調でそう言った。

伊野ちゃん先生じゃなくて、涼介がいいのに……。

なんて、言えるわけないか。

伊野尾先生「侑李が1人になるの嫌だってこと、知ってるからね」

侑李「……別に? 平気だしっ……」

僕がそう言うと、伊野ちゃん先生は笑った。

伊野尾先生「そーかそーか、平気なのか。じゃ、先生行っちゃうからな」

僕は、プイッとそっぽを向く。

伊野ちゃん先生は、いじわるだ。

いいもんね、元気になったら僕だっていじわるするもん。

伊野尾先生「嘘だよ、ごめんって」

ヘラヘラしながら謝ってる伊野ちゃん先生が、時々大ちゃん先生に見える。

先生っぽい立派な感じがしないところが似てる。

伊野尾先生「なぁ、侑李は俺の子になるの嫌?」

伊野ちゃん先生の目が、急に真剣な目になった。

侑李「ううん、嫌じゃない」

伊野尾先生「じゃ、俺は侑李のお父さんだから……義理の」

だから何? って感じだけど。

そうか、伊野ちゃん先生が父親になるってことは、僕は伊野ちゃん先生を「お父さん」って言うってこと?

絶対無理なんですけど……。

伊野尾先生「隠し事したらダメだかんねー」

侑李「はーい」

なんだ、そういうことか。

どうやらさっきの伊野ちゃん先生の言葉に、深い意味はなかったらしい。

伊野尾先生「侑李も涼介もモテるからなぁ。俺もモテちゃうかな」

相変わらずこの人は変な想像してるな、と思いつつ、僕は「医者はモテるでしょ?」と言う。

伊野尾先生「うん、結構モテるね」

伊野ちゃん先生はそう言って笑う。

涼介がここにいたら、笑ってただろうな。

―――はやく涼介に会いたいな

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作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時

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