お祭り ページ5
侑李サイド
涼介、大ちゃん先生と病室を出ると、いつもはシーンと静まり返っている廊下から、いろんな声が聞こえてくる。
侑李「にぎやかだね」
涼介「お祭りだからね」
有岡先生「よっしゃー、めっちゃ遊ぶぞぉ!」
元気な大ちゃん先生の掛け声に、僕たちは若干引きつつも「おー!」と拳を突き上げる。
裕翔はお母さんと行くみたいで一緒にいけないから残念だったけど。
でも、年に1回(というか3回?)のお祭りなんだから、いっぱい楽しむぞ!
庭に出ると、病室から見るよりも大きな屋台が並んでいた。
涼介「輪なげやろーよ」
侑李「いいよ!」
有岡先生「おっ、いいな、輪なげ」
大ちゃん先生は、大人で先生だから参加することはできないのに、それでも一番楽しそう。
輪投げの屋台に入ると、男の人がわっかを5つずつ渡してくれる。
番号の書かれた木の棒に、わっかを投げるタイプの輪投げだった。
屋台の屋根には、何番がなんの商品なのかがわかるように、写真が張ってある。
侑李「りょーすけは、なに狙うの?」
涼介「ゲーム機。1番。侑李は?」
侑李「……シャーペン。2本あるやつ。えっと、13番だよ」
涼介「シャーペン? そんなのでいいの?」
侑李「いいの」
だって、涼介が欲しがっているゲーム機、一番遠くにあるんだもん。
それに比べて僕の欲しいシャーペンは、前から2列目にある。
有岡先生「あれ、高いやつだよ。1000円くらいするやつ。書き心地いいって」
侑李「なんでそんなくわしいの?」
有岡先生「伊野ちゃんが買ったって自慢してきた」
侑李「ふーん」
涼介「へぇー」
僕たちがほぼ同時にそういうと、大ちゃん先生は笑ってきた。
涼介は、大ちゃん先生のことを相手にもせずにわっかを1個投げる。
涼介「あー、くそっ、入らねぇ」
投げる方向はいいけど、ゲーム機には届かない。
涼介の2投目は、運よくお菓子の詰め合わせをゲットしたけど、3投目、4投目は何も入らなかった。
有岡先生「りょーすけ、もっと思いっきり。頑張って!」
大ちゃん先生のその言葉で、僕はあることに気がついた。
涼介の投げたわっかは、僕が欲しいと言ったシャーペンの番号、13番のまわりに散らばっていた。
りょーすけ、それって……。
涼介は真剣な眼差しで、最後のわっかを投げる。
有岡先生「おー!」
涼介の投げたわっかは、きれいな弧を描き、13番の木の棒に入った。
はじめから、僕の欲しいのを狙ってくれてたんだ。
ありがとう、涼介。
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作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時