家族と相棒 ページ34
侑李サイド
涼介とゲームで対戦していたそのとき。
コンコンと、扉をノックされた。
手をとめて「はーい」と言った僕とは反対に、涼介は手を動かし続ける。
さっきまで圧倒的に有利な立場だった僕のゲーム画面には、GAME OVERの文字が。
あーあ、せっかく勝てそうだったのに。
伊野尾先生「侑李、涼介。ちょっといいか？」
病室に入ってきたのは、伊野ちゃん先生と大ちゃん先生だった。
侑李「どーしたの？」
伊野ちゃん先生の顔が、いつもより、少しこわばっている気がした。
涼介もそう感じたらしく、手をとめて、伊野ちゃん先生の目を見た。
伊野尾先生「侑李にね、ドナーが見つかった」
侑李「え！？」
てっきり悪い話だと思っていたから、すごく大きな声が出た。
涼介「ほんと？ じゃあ侑李、病気治るんだよね」
伊野尾先生「……うん」
こんなに急に決まるものなのか、と思った。
人生って、ほんとに何があるかわからないなぁって。
涼介は、僕より喜んでくれたけど。
侑李「その人から、２人分の骨髄、もらえないの？」
僕は、悲しかった。
待ちに待った骨髄移植だから、すごく嬉しかったのに。
それよりも、悲しさの方が勝っていた。
伊野ちゃん先生は、大ちゃん先生の目を見る。
困らせちゃったかな、と少し反省した。
有岡先生「……ちょっと難しいかな。気持ちはわかるけど」
大ちゃん先生は、ごめんねと言うように、申し訳なさそうにそう言った。
侑李「だよね、ごめんね。変なこと言っちゃった」
涼介「いいよ、俺は。まだ元気だもん。だから、もっと喜びなよ」
侑李「うん」
僕が笑うと、涼介は僕よりもっと笑った。
涼介「ドナーの人にさ、お礼言いたいんだけど、その人の名前なんて言うの？」
涼介がそう聞いた瞬間、伊野ちゃん先生の眉毛がピクッと動いた。
大ちゃん先生も、どこか神妙な顔をしている。
伊野尾先生「……うーん、個人情報だからな。でも、２人の親戚の人だよ」
涼介「ふーん」
親戚の人だよ、と言われても、よくわからなかった。
お父さんは、仕事でなかなか家に帰ってこなかったし、お母さんも僕たちを捨てたから、親戚の人なんて全然知らない。
伊野尾先生「あ、えーっと、今日はその報告だけだから……その、あのぉ……」
侑李「いいよ、じゃあね」
有岡先生「また来るから、たぶん」
侑李「はーい、バイバイ」
先生たちは、病室を出た。
ドナーになってくれる人、誰かわからないけど。
――――感謝しないとな
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作者名：J | 作成日時：2020年4月14日 13時
