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家族と相棒 ページ32

有岡先生サイド

伊野尾先生「ねぇ、大ちゃん。いつになったらおごってくれるの?」

病院の廊下を歩いていると、伊野ちゃんに話しかけられた。

有岡先生「ああ、えーっと……今日?」

伊野尾先生「ダメ、今日は当直だから」

有岡先生「じゃあ明日?」

伊野尾先生「……うん、オッケー」

有岡先生「こんなことで話しかけてくんなよ」

伊野尾先生「えー、大事なことだよ」

大事なことじゃねぇだろ、と言うと、伊野ちゃんは、わざとらしく頬をぷくっと膨らませた。

伊野尾先生「大ちゃん、暇?」

有岡先生「まあ、今日中にやらないとダメってのは終わったけど?」

伊野尾先生「よし、じゃあこっち来て」

俺は、伊野ちゃんに手をとられ、どこかに連れていかれる。

有岡先生「どこ行くの?」

伊野尾先生「いいから」

何度聞いても頑なに行き先を教えてくれない伊野ちゃんは、エレベーターに乗り込んだ。

しかも、最上階に向かうボタンを押している。

有岡先生「マジでどこ行くの?」

伊野尾先生「うん、そろそろ教えてあげるか。屋上!」

有岡先生「屋上かよ」

伊野尾先生「2人で行ったこと、あまりないから」

有岡先生「たしかに……」

涼介に会うことはよくあるけど、伊野ちゃんに会うことは、あまりない。

最上階まで上がって、エレベーターの扉が開いた。

階段を上がって、屋上に出る。

伊野尾先生「あー、久しぶりだなぁ、この感じ。気持ちいー」

有岡先生「そんなに?」

伊野尾先生「うん、ここ大好き」

有岡先生「そう、ですか……」

ひゅーっと風が吹いて、伊野ちゃんの白衣がなびく。

頬に当たる風が、ちょっと前に比べて、大分冷たくなった。

俺が空を見上げた瞬間、電話のコール音がなった。

伊野尾先生「ごめん、ちょっと待ってて」

俺は、声を出さずにコクっと頷いた。

俺に背を向けて、伊野ちゃんが頷いたり、ペコッとお辞儀をしたりしている。

どうせ相手からは見えないって、と心の中で突っ込みを入れる。

急に伊野ちゃんが振り向いて、俺を見てきた。

俺は、わかりやすく首をかしげる。

伊野ちゃんは、「はい」を連発してから「失礼しまーす」と言って、電話を切った。

有岡先生「どーした?」

伊野尾先生「……見つかった」

有岡先生「は?」

伊野尾先生「見つかったんだよ、侑李のドナー」

伊野ちゃんは笑って、俺に抱きついてきた。

「良かった」と何度も繰り返す伊野ちゃんの涙が、俺の首筋のあたりに落ちた。

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作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時

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