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医者に必要なもの ページ26

有岡先生サイド

昨日、伊野ちゃんに「救急なんて行くなよ」と言われた俺だったが、今日も救急にいる。

人手不足なんだから、しょうがないよね。

パソコンのキーボードをずっと打ち続けていると、隣の椅子が勢いよく動いた。

有岡先生「あ、道枝。おはよう」

道枝先生「おはようございます。って、おはよう、じゃないですよ。まだ休んでた方がいいですって」

有岡先生「えー? だってもう元気だもん」

道枝先生「本当ですか?」

今までに見たことのない道枝の表情に、一瞬、なんて言うのが正解なのか、わからなくなった。

有岡先生「……本当だよ。今嘘ついて、メリットないだろ」

道枝先生「……そうですね」

いつもの道枝の顔に戻り、俺は少し安心した。

有岡先生「ありがとな、昨日」

道枝先生「へ?」

有岡先生「だから、昨日だよ。伊野ちゃんも、道枝のこと絶賛してたよ? ほんとにありがとう」

2回もお礼言うなんて思っていなかったから、少し照れ臭い。

道枝先生「ああ、そんなの、いいですよ」

有岡先生「なんでだよ。お礼くらい言わせろよなぁ」

道枝先生「伊野尾先生、そんなに俺のことほめてくれてたんですか? 俺、ほとんど何もしてないですよ?」

有岡先生「道枝くんは、いい医者だなぁ、だって」

道枝先生「……俺って、いい医者なんですか?」

道枝は、急に体を俺の方に出して、真剣な目でそう聞いてきた。

道枝の瞳の奥が、キランと光る。

涼介が泣くのを我慢しているときの目と、少し似ていた。

有岡先生「……なっ、なんだよ、急に」

道枝先生「……すみません、何でもないです」

有岡先生「何でもなくは、ないだろ。どーした? 誰かに何か言われたりした?」

道枝先生「いえ、そういうわけでは……。ただ……っ」

有岡先生「ただ?」

道枝先生「昨日の、意識のない有岡先生見たとき、怖かったんです。一瞬、頭、真っ白になったんです。医者ってのは、患者さんが……亡くなるのをたくさん見なくちゃいけない。それなのに、いちいち、怖いとか、そんな感情をもったら、ダメだと思うんです」

なるほどな、と俺は思った。

道枝が言っていることは、よく理解できた。

だって、研修医だった俺は、道枝と全く同じことを考えていたから。

でも、俺は、こう思った。

有岡先生「やっぱ、道枝は、いいお医者さんだな」

道枝は、何も言わなかった。

ただまっすぐ俺の目を見て、目を潤ませていた。

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作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時

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