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たとえ相棒だとしても(ももあ様 リクエストです!) ページ16

侑李サイド

伊野尾先生「お薬、こっちのに変えてみような」

そういう伊野ちゃん先生の手には、いくつかのパックが握られている。

おそらく、白血病を慢性期の状態に戻すための薬と、それにともなう副作用を抑える薬だろう。

伊野尾先生「お熱、測ろーな。くらくらする?」

伊野ちゃん先生はパックを点滴に繋げながら、僕にそう聞いてくる。

侑李「今は大丈夫」

これは、ほんとのこと。

自分でも何でかはわからないけど、今日は調子がいい。……気がする。

伊野ちゃん先生は、ピッと体温計の電源をいれて、それを僕に渡した。

僕は、体温計を脇に挟んで少し待つ。

伊野尾先生「副作用、きついかもね」

侑李「……大丈夫だよ」

伊野ちゃん先生は「だよな」と笑っていたけど、「大丈夫」と言ったのは嘘だった。

もう、すぐ近くに死がある気がして。

あと少しで、死んでしまう気がして。

体温計がピピッと音をたてたから、僕は服の中に手をいれる。

僕の手は、恐怖で震えていた。

まるで自分のものではないような手を必死に動かして体温計をもって、伊野ちゃん先生に渡した。

伊野尾先生「39℃か……大丈夫?」

侑李「だいじょっ……うぅっ、はぁ、いっ……」

伊野尾先生「侑李?」

「大丈夫」と言おうとした僕の視界が、真っ白になった。

さっきまで、調子、良かったのに。

僕は唇を噛んで、必死に目をつむった。

早く治まって。

伊野尾先生「どーした? どこが痛い?」

侑李「……」

伊野尾先生「痛いんじゃないの? めまい?」

侑李「……っ」

「視界が真っ白になっているの。助けて、伊野ちゃん先生」

その一言が、どうしても言えなかった。

だんだんクラクラしてきて、僕の体が大きく前に傾く。

ガシッ。

誰かが、倒れる僕の上半身を受け止めてくれた。

侑李「いの、……はぁっ、ちゃ、せん、せ……はぁ……っ」

伊野尾先生「ゆーり、クラクラする?」

侑李「……ううっ、……うん、する」

どうやら、外側の強がりな僕も、本当は弱いらしい。

僕は、支えてくれている伊野ちゃん先生の腕を掴んだ。

ギュッと握ると、伊野ちゃん先生は僕の頭を撫でて、ベッドの背もたれにゆっくりと僕の体を倒した。

伊野尾先生「辛いね。ありがとね、教えてくれて」

何で、先生がお礼を言うの?

僕、ずっと隠していて、迷惑も心配も、いっぱいかけたのに。

これが、辛さによるものなのかはわからないけど。

伊野ちゃん先生に抱き締められながら、僕は泣いていた。

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作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時

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