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ふたりなら大丈夫 ページ1

涼介サイド

侑李が……いない?

検査を終えて部屋に戻ってきた俺は、部屋の隅々まで見回した。

ベッドの下は除いたし、タンスの中も一応確認はしてみたものの、どこにもいない。

トイレ……かな?

俺は、いちばん近くにあって、いつも使っているトイレに入る。

個室の鍵は全部開いていたから、ここにもいない。

ここでもないとすると……。

俺は探偵のように、思考を巡らせていく。

院内学級が怪しいな……。

俺は、院内学級の教室の方へ歩いていった。

院内学級の前の廊下まで来たとき、誰かの泣いている声がした。

近づくにつれて、その声がハッキリと聞こえてくる。

侑李の声……?

いつも聞いている、この可愛らしい声は、明らかに侑李のものだった。

俺はバレないようにそっと教室の中を除く。

侑李「けぇとぉ、けえとぉ……」

侑李は圭人のことを思い出して泣いているんだ。

やっぱり、そうだよな。悲しいよな。

今まで気づいてやれなかった自分に腹が立つ。

いや、違う。きっともう、俺は気づいていた。

気づいていたのに、気づいていないふりをして。

ポロッと一粒の涙が俺の頬を伝った。

俺は、早足で、でも音をたてずに病室に戻った。

布団をギュッと握って、唇を強く噛む。

涙が溢れてとまらなかった。

涼介「ゆうりぃ、……おれ、……ごめんな」

俺は、あいつの相棒で、1番の理解者になってやらなくてはいけないのに。

何十分も泣き続けていると、ノックもなしに、いきなり扉が開いた。

侑李「りょおすけは、悪くないよ」

おそらく、侑李は俺が泣いているのを、外で聞いていたのだろう。

侑李「僕も、ごめんなさい」

涼介「えっ?」

侑李「僕、今までね、大ちゃん先生のとこ行っててね、話聞いてもらってた。涼介と、一緒にいけばよかったね。ごめんなさい」

俺は、首を横にブンブンふった。

侑李「僕はもう、いっぱい泣いたから。次は、涼介の番。泣いてもいいよ」

侑李は、俺の手を握ってくれた。

そして、もう片方の手で俺の背中をさすってくれた。

侑李「涼介、僕の前じゃ泣けないの? 僕、邪魔なのかな?」

侑李は悲しそうに言ってくる。

確かに侑李の前じゃ強がってしまうけど、侑李が邪魔なわけがない。

侑李「泣きなよ、涼介。僕は、弱虫な涼介も大好きだよ」

侑李はいつもそうだった。

普段は甘えてくるのに、本当は俺よりずっと強くて。

涼介「っ、ふぇっ、うぅっ、ぅわぁぁぁ」

溢れる涙が、俺のベッドを濡らしていた。

ふたりなら大丈夫→



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作者名:J | 作成日時:2020年4月14日 13時

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