21 ページ22
*
2分ばかり弾いてイメージが途絶えると、私は弾くのを止めた。
それ以上は無駄だと感づいたら止めるのがよいという考えだった。
「あれっ……！？」
蓋を閉めて振り返るといつの間にかこの場にいる人数がかなり増えていて、私を含め12人になっていた。
そして皆さんが席についているのを認識する。
空席になっている私の対面の席は恐らく総統閣下の席なのだろう。
そこで皆さんが私を注視していたことに気がつくと、最前面に焦りが出てくる。
……勝手にピアノに触ったことに怒ってらっしゃるかもしれない。
そしたら私などひとたまりもなく消されてしまう。
「も、申し訳ありません！ 勝手に触ったことをお許しください！」
私は咄嗟に頭を下げる。どうか許されますようにと自分勝手にも願っていた。
そのまま気まずい空気のままかと思われたが、どうやらそれは考え過ぎだったようだ。
2秒の沈黙の後に1人の柔らかい声によってそれが破られた。
「ロメラさん、顔を上げてください？
誰も怒ってなんかいませんよ、寧ろ皆さん聴き入っていましたから」
近くから聞こえた声にはっと顔を上げれば穏やかな表情の落ち着いた雰囲気の方が席を立ってらして、私の左隣にいらっしゃった。
優しいカフェオレ色の頭髪が特徴なその方は、私の背中にそっと手を当てた。
「そうでしょう、皆さん？」
彼が皆さんの方を向いて問うと、この場にいる全員が頷いていた。
白い軍服の方は「凄く綺麗な音色だったよ。よかったらまた聴きたいな」と、トルコ帽が特徴的な方は「俺も同じくやなぁ。また聴きたいめう〜」と仰ってくださった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁の園(暁夢路)(プロフ) - みしろさん» い、今通知を見てビビり散らしております……か、感謝の極みであります……！！ 読みやすいと言っていただけて安心しました、如何せん小生文体が堅くなってしまった人間でしたので(-_-;) コメントありがとうございます、頑張ります！！ (2019年11月2日 7時) (
レス) id: 2136db8e08 (このIDを非表示/違反報告)
みしろ - 回答パートも嫌味がなくて納得できるし、こんな考え方もあるんだ…！と素直に感心しました…これからも体調にお気を付けて頑張って下さい…！勝手ながら影からひっそり応援させていただきます (2019年11月2日 7時) (レス) id: 950f4c5674 (このIDを非表示/違反報告)
みしろ - 圧倒的な語彙力を感じました…とても読みやすくて頭にすんなり入ってくるので時間を忘れて熟読できました…！ (2019年11月2日 7時) (レス) id: 950f4c5674 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁の園 | 作成日時：2019年5月14日 20時
