灰色の夢 (ページ14)

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Part 14 ページ14

それから兄者さんが時々、会いに来てくれた。
そのおかげか少しずつ私は心が晴れていく。

兄者「いや、そうじゃなくて、ここで指を…」

A「こ、こうですか？」

今は篠笛の吹き方を教えて貰っている。

兄者「んで、息を下に向けて吐くんだ、細く吹けば高い音が出る。少し広く吹けば強い音が出る」

実際にやってみるが、イマイチ音が出ない

兄者「ははっ、下手」

A「ひどいっ！？だってまだ始めたばかりですよ？」

もう一度、やって見ると、少しだけ音が出た

A「出た！」

兄者「はいはい、よく出来ました」

笑って私のおでこを撫でる

兄者「あ〜、簪とっていいか？」

A「え？いいですけど、もう寝るんですか？」

兄者「いや、そうじゃなくて……こっちの方が撫でやすいだろ？」

A「そうですねっ…」

兄者「それに俺は髪を下ろしてる方が好きだ」

フッと細く笑う。
初めて見たかもしれない、その表情を。

A「はい、ありがとうございますっ…」

兄者「その笑顔」

チュッ

A「兄者さんっ？…」

兄者「ダメだって」

頬に手を添えられ熱いキスをする
舌が絡み合っては抱きしめる腕に力が入る

兄者「はぁっ……可愛すぎるだろ」

A「そ、そんな、こと言われましても……」

兄者「ふっ…」

また優しくキスをした。

兄者「早く出来るようになるといいな、お前といつか1曲を」

A「はい、私、頑張ります！」

兄者「あぁ。」

座敷に広がる笑い声も和楽器の音も、全部が愛おしい時間を奏でていた。

そんなある日のこと
私は女将さんの頼みで、おつかいに出ては和菓子を買って戻ってくる。
台所に和菓子を置いては部屋に戻ろうとした、その時ｰｰ

「はははっ、そんなことないよ」

A「(この声……)」

渋く太い声
それと裏腹に優しい笑い声

ちらっと横を見ると、障子越しに見える影

「ねぇ、もっと教えてよ？弟者様のこと」

A「っ！…」

あぁ、やっぱり…弟者さんなんだ…。

どうして自分ではなく他の人に会いに来たんだろう？
そう思ってしまう自分に少し嫌気がさす。

A「(…やっぱり、私はただの遊女なんだ…)」

何事もなかったかのように部屋に戻ろうとしたとき、

どてんっ

不注意で裾を踏んでしまい転んでしまった。