なかったみたいに ページ34
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「そっ、か」
歯切れの悪い返事にイマイチやなーって思ったけど、徐に抱きしめ返してくれた斎賀さんに、今度は俺が動揺する。
お、俺は都合のええ夢でも見てるんか?
そう思たけど、優しい柔軟剤の匂いとか、制服越しに伝わってくる体温が、夢じゃない事をありありと証明してて。
今にも溢れだしてまいそうな気持ちに追い討ちをかけるように、斎賀さんの額がグリグリと肩口に押し付けられる。
こ、れは……。
淡い期待に高鳴る胸を抱えながら、斎賀さんの表情を見る為に距離を取った。
「───......」
俯けられた顔を覗き込めば、マシュマロみたいに柔かった頬は赤く色づいて。
合わさらへん双眸は、心做しか潤んでるように見えた。
「さい───」
「おおおおやすみ!」
上擦った声で態と俺の声を遮った斎賀さんは、逃げるように身を翻してアパートの階段を駆け上がる。
「……ほんまに友達として好きなん?」
扉の向こうへ消えてく後ろ姿に問いかけても、その真意は返ってこおへんけど。
友達として好きと言うには、あまりにも甘い表情やった。
「……頑張ろ」
角名にも応援された事やし。
でもその角名が一番油断ならへんねんな……。
そんな決意と警戒を胸に、斎賀さんと辿った道を引き返す。
───けど、そんな日もそれまでの関わりもなかったみたいに、斎賀さんは俺を避け始めた。
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ria(プロフ) - 私の心にズキュンっときました。運命ですね。好きです(真顔)更新、頑張ってください! (2020年9月12日 20時) (レス) id: 52e75d4e08 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ味のリンゴ - なんだろ・・・・・・読み始めた時から運命だったのかな(は 、もう好きです(唐突 (2020年9月12日 17時) (レス) id: 106317acf4 (このIDを非表示/違反報告)
東花 - うん、、あの、、あれ、、もう、、うん、、好きです(語彙力) (2020年9月7日 15時) (レス) id: 8268995d78 (このIDを非表示/違反報告)
きいろ(プロフ) - いや、、なんか、、あの、、えーと、、好きです(迫真) (2020年9月7日 15時) (レス) id: d4f4d3c247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さいとー | 作成日時:2020年8月15日 12時