溢れんばかりに増してく ページ32
.
「あ、私の家ここだよ」
レンガ調のタイルで出来たアパートを指す斎賀さんに、幸せを感じてた心が一気に冷めてく。
もう一緒におれんのか……。
逃れられへん現実に溜息を吐きたあなるけど、これを乗り越えたら明日も会えるんやし、気張らな。
「送ってくれてありがとう」
「全然ええで。気にせんといて」
「うん……」
生温い風と共に吹き抜ける沈黙に、帰る流れやという事を察する。
けど、足は機能を失ったかのように動かへん。
まだ一緒におりたいっていう気持ちがそうさてんのか、俺と同じように動かへん斎賀さんを見てそうなってんのか。
……多分、どっちもやな。
「あの、もし宮くんが良かったら……」
徐に口を開いた斎賀さんは、後ろ背に手を組んで視線を彷徨わせる。
何処か気恥しそうにも見える表情に、告白やったらええのになぁ……とか、贅沢な事を思った。
「れ、連絡先、交換したい……です」
形の良い目をぎゅっと閉じて返事を待つ斎賀さんは、はっきし言わへんくんても可愛い。
なんでこんな可愛いんやろ。
そんな漠然とした疑問を抱えながら、断るわけなんてない申し出に「俺もしたい」と返す。
「……良いの?」
「全然ええけど……やっぱやめとく?」
「や、やめないです!!」
何でか敬語になった斎賀さんの反応に笑いながら、互いに身を寄せ合って連絡先を交換する。
友達欄に確かに表示された斎賀Aという名前に、それでなくても緩んだ頬が更に緩うなって。
このどうしようもない感情は、溢れんばかりに増してく。
.
804人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ria(プロフ) - 私の心にズキュンっときました。運命ですね。好きです(真顔)更新、頑張ってください! (2020年9月12日 20時) (レス) id: 52e75d4e08 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ味のリンゴ - なんだろ・・・・・・読み始めた時から運命だったのかな(は 、もう好きです(唐突 (2020年9月12日 17時) (レス) id: 106317acf4 (このIDを非表示/違反報告)
東花 - うん、、あの、、あれ、、もう、、うん、、好きです(語彙力) (2020年9月7日 15時) (レス) id: 8268995d78 (このIDを非表示/違反報告)
きいろ(プロフ) - いや、、なんか、、あの、、えーと、、好きです(迫真) (2020年9月7日 15時) (レス) id: d4f4d3c247 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さいとー | 作成日時:2020年8月15日 12時