015:宮くんと私と二人きり ページ16
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「先生おらんな」
保健室の扉を開けるのと同時に離された手に、気付かぬうちに停止していた思考が巡り出す。
口を覆った掌の感触。
繋がれた手から共有していた体温。
それが今になって鮮明に蘇ってきて、ジワジワと蝕むように顔が赤くなる。
「斎賀さんどうしたん?」
戸棚を漁っていた宮くんは、入口に突っ立ったままの私に気づいて振り向いた。
心底不思議そうなその表情は、自分が原因である事をちっとも自覚していない。
宮くんの魔性男!!
私じゃなかったらとっくに勘違いしてるよ!!
照れが限界突破して内心逆ギレしている私は、八つ当たりのように強引に宮くんを座らせる。
「頬、ちょっと腫れてるから冷やすね」
それでも顔に出ないよう気をつけながら、勝手知ったる保健室で氷嚢を用意した。
自分の顔面に押し当てたい……。
けれど、怪我人である宮くんを差し置いてそんな事が出来るはずもなく、薄らと赤い頬にあてる。
「頭も打ったって角名くん言ってたけど……」
「おん、思いっきり壁にぶつけてん」
「どこ?」
訊ねれば「ここ」と言いながら私の手を掴んで、宮くんは頭に触れさせる。
銀髪の中を右往左往する指が、不自然に膨らんだ箇所に触れて思わず手を引っ込めた。
「こんくらい大丈夫やで?なんなら侑には感謝してんねん」
殴り合いそうだったのに?
意味が分からず首を傾げる私の手から氷嚢を攫った宮くんは、近くの空いていた椅子を引き寄せてポンポンと叩く。
私はそのジェスチャーに素直に従って隣に座り、満足そうに笑う宮くんを見上げた。
「やって、斎賀さんと二人きりになれたやろ?」
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ria(プロフ) - 私の心にズキュンっときました。運命ですね。好きです(真顔)更新、頑張ってください! (2020年9月12日 20時) (レス) id: 52e75d4e08 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ味のリンゴ - なんだろ・・・・・・読み始めた時から運命だったのかな(は 、もう好きです(唐突 (2020年9月12日 17時) (レス) id: 106317acf4 (このIDを非表示/違反報告)
東花 - うん、、あの、、あれ、、もう、、うん、、好きです(語彙力) (2020年9月7日 15時) (レス) id: 8268995d78 (このIDを非表示/違反報告)
きいろ(プロフ) - いや、、なんか、、あの、、えーと、、好きです(迫真) (2020年9月7日 15時) (レス) id: d4f4d3c247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さいとー | 作成日時:2020年8月15日 12時