001:宮くんと私と腹ぺこ音 ページ1
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───ぐ〜、ぎゅるるるる。
教室の喧騒に混じって、けれども確かに聞こえたそれ。
窓の外をぼんやりと眺めていた私は、不意の盛大な腹ぺこ音に吹き出しそうになる。
澄んだ青から視線を外して横を盗み見れば、魂が抜けたように机に突っ伏している大きな体。
開け放たれた窓から差し込む陽の光がキラキラと銀色を輝かせ、目を細める。
「アカン……なんか今日めっちゃ腹減るわ」
机に向かってブツブツと呟いている彼は、どうやら相当お腹が空いているらしい。
───宮 治。
この学校の生徒なら知っていない方が可笑しいくらいに有名な彼は、ほんの二週間前奇しくも隣の席になった。
「角名なんか食いもん持ってへん?」
「持ってない」
「え〜、俺ほんま餓死しそうやねんけど」
机に顎を置き、お腹を抱えてそう訴える彼がちょっと可哀想に見える。
小腹が空いた時用に常備しているカロリーメイトをさり気なくあげようかと思ったが、この教室にも生息している宮くんのリアコとガチファンが怖い。
彼の空腹と私のアオハルを天秤にかけた時、迷う事なく上に傾くのは私のアオハル。
ごめんよ宮くん。
飢えた子犬のようにお腹を空かせているキミを見捨てるのは心が痛むが、私だって命は惜しいんだ。
自分でも訳の分からない言い訳を胸中で述べ、今日の夕飯は何にしようかな〜と視線を逸らした。
否、逸らそうとした。
「───!」
けれどそれは、私よりもワンテンポ早く角名くんから視線を逸らした宮くんのせいで叶わなかった。
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ria(プロフ) - 私の心にズキュンっときました。運命ですね。好きです(真顔)更新、頑張ってください! (2020年9月12日 20時) (レス) id: 52e75d4e08 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ味のリンゴ - なんだろ・・・・・・読み始めた時から運命だったのかな(は 、もう好きです(唐突 (2020年9月12日 17時) (レス) id: 106317acf4 (このIDを非表示/違反報告)
東花 - うん、、あの、、あれ、、もう、、うん、、好きです(語彙力) (2020年9月7日 15時) (レス) id: 8268995d78 (このIDを非表示/違反報告)
きいろ(プロフ) - いや、、なんか、、あの、、えーと、、好きです(迫真) (2020年9月7日 15時) (レス) id: d4f4d3c247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さいとー | 作成日時:2020年8月15日 12時