4‚ ページ4
覚悟はしていたが、野宿だよな。宿に泊まりでもして見つかれば、連れ戻されることがわかりきっているもの。
遠慮がちな焚き火を焚きながら、これからどうしようかと思案する。
ただ、人を守るためだけに、陰口だけたたかれて努力も報われなさや、やりたいこともできないという自由のなさに嫌気が差して故郷を離れたものの、いざ自由を手に入れてしまえばそれはそれでもて余す。
そもそも、やりたいことなどあったのだろうか…
あれが人生の全てだとして、ずっとあそこで暮らし、自由がないとだけ嘆いていればよかったのではないか。
かといって、今更戻る訳にもいかず。
本当に馬鹿なことをしたものだ。自分のしたことの愚かさに今ごろ気づく。
苦笑を漏らし、自分の腕を枕に眠りについた。
「いだっ…」
起きて早々間の抜けた声が出た。
昨晩腕を枕にしたからか、ほとんど腕の感覚がない。これじゃ剣が振るえないじゃないか…
パタパタと服に付いたホコリをはたき落とし、立ち上がる。
体の節々が痛い。軽くストレッチ的なことをしてみる。よし、だいぶましになった。
焚き火の跡を隠して…食欲は…無いから食べなくてもいいか。
かさりと、背後から枯葉を踏む音。
「っ…⁉」
思わず剣を抜き、構える。
ろくに戦える状況じゃない。勘弁してくれ。
こちらが戦闘体制に入ったのを見るなり、飛びかかってくる獣。
敵意むき出しじゃないか。まぁ、雑魚だろうな。
剣を縦に振るう。手応えがあるかと思いきや、ほぼない。
斬れていないのかと辺りを見渡すも、あるのはふわふわとした毛の生えている獣の死骸のみ。
剣先でつついても、動かない。持ち上げてみると、案の状軽かった。
なんなんだこの獣…見たことが無いな。
食べられるだろうか。
脚にくくりつけてあるナイフを抜き、肉を薄く切り取る。血を払い、口に入れる。
……しびれはしないし、大丈夫な気がする。
残りも薄く切り、油紙に包む。食糧確保だな。
まだ、領地からは出られていないだろう。先に進むことにしよう。地図を見ながら、森へと入った。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:真 @アドミーク | 作成日時:2022年8月26日 17時