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―彼女のいる領地は、何者からも守られ、平和に暮らせるだろう―

そう謳われた騎士がいた。名は、アカシャ・クイール。この物語は、彼女と、彼女の周りの人々を描いた物語だ―。



 民「アカシャ様!ありがとうございます!最近は魔物の被害が多くて…」

目の前で頭を床に打ち付けんばかりに頭を下げる民。私はこの領地を守ることで生きていけているのだからそこまでしなくても…と思いながらも、こう返す。

アカシャ「また、困った時呼んでくださいね。できる限りのことはしますから。」

代々、私の家系は騎士一族で、数々の優れた騎士を輩出していた。そして、クイールに生まれた男児は勿論、女の私も訓練の例外にはされなかった。

子供の頃から、他の子供たちが遊んでいるのを横目に訓練を受けていた。
まぁ、慣れてきてしまえば、「遊びたい」なんて思わなくなっていたけれど。

その熱心な教育のおかげか、私は、『伝説の女騎士』なんて異名で呼ばれるようになっていた。
でも、やはり伝説には疑いがつきものらしい。

『あいつは伝説だなんて呼ばれてえらぶっている。』
『本当にアカシャが倒しているのか?あの細い女が。』

なんていう言葉は常に耳に入る。
女だから。だから駄目なんだと、男らに負けない程訓練して、謙虚に、努力を積み重ねてきたつもりだった。

でも駄目だった。舐められたままだった。
不快感はあれど、やらなければ生きていけないわけだから、惰性で今の仕事を続けているけれど、精神的限界が近い気がする。
私もあくまでも人間であるのだから。

民「あのー…アカシャ様…?」

そんなことをつらつら考えていたら、目の前の民を困惑させてしまったようだ。

アカ「…すみません、では。」

にこりと笑みを作ってその場を立ち去る。
埃にまみれた薄暗い路地を通って騎士寮へと歩く。
いくら伝説の騎士だとしても、あまり稼げた仕事じゃない。

貴族などに囲いこまれた騎士ならともかく、私は騎士団所属だ。そのおかげで住むところはあるが。
だが、無断で出ていくわけにはいかないだろう。


……でももう疲れた。
どうして私はこんなに報われないのだろう。
どうして他の騎士は成果をあげれば褒め称えられるのに、なぜ私だけ後ろから聞こえる声が増えていくのだろう。
必死で出動命令には全て従って、他から押し付けられた仕事だって、いくつもこなした。

私の体には生傷が絶えなかった。
でも、それより明確に痛む場所のわからない傷の方が多かった。

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設定タグ:騎士 , オリジナル   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:真 @アドミーク | 作成日時:2022年8月26日 17時

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