サーチ！犯人を追え ページ14
ビュウ、と開けた窓から突風が部屋へ侵入する。
現在午前10時ジャスト。
俺は髪を靡かせながら窓枠に足をかける。
「…ここはタワマンの最上階か?」
下を覗くとめちゃくちゃ小さく見える学院の建物たち。カーテンで遮蔽されていたこの独房はこんなにも高い位置にあったとは。生徒を流さないためなのかなんなのか。ここまで高くする必要があったのだろうかと設計に疑問を抱く。
担任が訪れてから2日後、お仕置き地獄から生還したらしいミドリにテレパシーでゾムの集めた情報含め、事件の進展を聞いた。
まずゾムが得てきた情報。
貴族たちの中では今『代理執行人』という存在の噂で持ちきりだという。そいつは、強い憎しみの感情を抱いている時どこからともなく現れる。
憎む相手を懲らしめたい時、貴族というのは世間を気にして動くことはできない。その感情に漬け込んで、代理執行人は代わりに相手をボコボコにしてくれる…らしい。
実際に学院外では執行人によるものとされる貴族の不審死や、被疑者が一切の犯行を否定する暴行事件が増えてきており警備隊もピリピリしているのだとか。
話が出たタイミング的にも恐らく、彼はそいつに襲われたのだろう。ばっちり被疑者が犯行を否定ってところも同じ流れだし、チーノの以前の発言がフラグとなっているならより可能性は高い。
だが俺の姿を利用したのは…なぜだろう。
「それを今から調べに行くんだけど……さ！」
勢いよく窓枠を蹴り、宙に身を投げ出す。。
ミドリが教えてくれたメモの数字。
『10〜11』
ほとんどの教師たちが授業や業務に出払っていて、学院内のセキュリティ大幅緩和と警備人員が手薄になる時間帯だった。
『3〜4』
こっちはミドリが唯一、一緒に行動できる時間。
短いと思ってはいけない。なんせ相手は学院の大量のシステムを1人で制御、操作している実は多忙教師だから。
つまり、俺はこの時間にどこかへ隠れて時間になったらミドリと合流しなければならない。
らっだぁが力を行使したのか尋問は1週間無いようだし、俺の逃走が気付かれるまで猶予は十分にある。
独房暮らしによって溜まっていた魔力を最大限に使用しつつ、気配消しを強く発動しながら空を爆速で移動する。
するとどこからかピコンという音と共に、久しぶりに聞く高い凛とした声がテレパシーで届いた。
An『おっ？！オおおおお⁉︎ご主人サマ⁉︎』
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作者名：あんべべ | 作成日時：2021年10月9日 16時
