・〜day 2〜 ページ42
An「ご主人様！起きてください〜！」
アンのよく通る声と勢いある揺さぶりで
「腕は…動く。痛みも火傷もなくなった…」
激痛の件は許せないが改めてあの先生に感謝だ。絶対に痕が残るような怪我だったのに、包帯を解けば綺麗さっぱりなくなっていた。
An「それは確かにそうですが…！どなたかがこの部屋に接近してきてますワ!」
男子寮の最上階の一番端にある部屋。下も前も隣も気味悪がって誰も住んでおらず不気味さから、ここに人が来ることなんてそうないというのに。
(誰だ…?)
身だしなみを魔法で綺麗にしてから廊下に顔を覗かせる。あいにく部屋にはアンやアンの子どもたちがいるため、見られるわけにいかない。変装時の上着も昨日放置したままだし。
薄暗い廊下、その闇を抜けて出てきたのは昨日追いかけっこをした人物だった。
zm「ん、気付いてたんか」
「ええまぁ。…いががしました?」
要件を尋ねると、あー…えーと…と彼は曖昧に口籠もる。
zm「メイク」
「メイク?」
zm「またやって欲しくて頼みに来た」
フードを深く被りながらゾムはそう言う。なるほど、彼はお願い事が苦手なのかもしれない。
「いいですよ。今支度してきますね」
zm「また図書館でメイクするんか?」
「人が来ないところでないと俺が貴方にメイクできないでしょう」
zm「じゃあとっておきの場所ある」
ーーーー
zm「ついたで」
「いや、あの？？」
目の前にある扉には生徒会室という表記が。
あれ、これ見えてるの俺だけなのだろうか?いやこの世界の表記で書かれているから彼方もわかってるはず。
「ゼペルがここに入っ」
zm「ほら早く」
部屋の中に無理やり入室させられる。他の教室よりも広い、豪華な作りり生徒会室じゃなくてこれ超すごい貴族の一室なのではないか?
zm「まだ明け方やし図書館よりも人は来ないで」
「…」
ゲームでは一度だって入れなかった教室。しかもまだ腹の探り合い程度の彼と一緒に。
(逃げないと思われてるのか…?)
彼方はおそらく自分の定位置なのであろう席に座ってこ まだかと急かしている。
「…はぁ。昨日と同じになりますけどいいですか?」
zm「うん」
俺が化粧ポーチのチャックを開けながら近づくと、ゾムはフードを取ってアメピンで前髪を上にあげた。
人を選ぶはずのデコだしさえ似合ってしまうとは、これが攻略キャラクターの顔なのだろう。
「じゃあ始めますよー」
zm「うん、頼むー」
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作者名：あんべべ | 作成日時：2021年9月26日 19時
