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「ぞ、ゾム様?一体どうしたのですか?」
イベントが全てひと段落しホッとしていたのも束の間、突然やって来たゾムに手を引かれ学院内を歩いていた。
声をかけても彼方は何も反応せず、やっと足を止めた場所はクィーン襲来時からの復興がまだ完全には終わってなく、街灯も少ない暗い場所だった。
しかも雪も降り始め、周囲の音もかき消されていく。
もし襲うならば絶好な環境と言えるだろう。
(なんだ急に…)
警戒していると、彼は視線を合わせずに口を開いた。
zm「……た」
「え?」
留学することになった。
彼は俯いたままそう告げる。
「…どれくらいの間ですか?」
zm「カリキュラムの進度による。長くて六月おわり」
最悪のタイミング。
ルナの魔法を解いて、特訓が始まろうとしていたのに。よりにもよって今突然告げられるなんて。留学なんて本来、簡単に行きますどうぞなんてできるものでは…
(今回のイベントで担任は全く表に出てきていない…!異変を悟って俺と関わらせないよう仕組んだのか…⁉︎)
zm「この後すぐに出発だから、せめてAには伝えておきたくて」
絶対に強くなって帰ってくるから。
風が吹いてフードが落ちる。彼の左目は翡翠ではなく黒色に変わっていた。
(最悪だ)
彼が本気なのだと嫌でも分かってしまう。
学院長の言っていた通り。例えそれが闇だと、悪だと分かっていても、力に憧れ、引き返せるか分からない所まで進む。
彼はそこまで行こうとしているのだ。
zm「俺、Aみたいに強くなりたいんよ。だからもっと力を手に入れて、隣に立てるようになりたいんや」
笑って話すゾム。
闇属性の代償さえも構わない。そんな風に見えるゾムの姿を見て、泡が弾けるように……腹の底で何かが弾ける音がした。
「______ふざけるな」
腹の底から滲み出るような声が出た。
「俺が強いわけないだろう!よく見てみろよ、俺は…お前が思ってるよりずっと弱い!!いくら手段を得ても上手く扱えないし、嫌でも思考や能力面がお前や…他のみんなよりも劣ってる。思考の作りや視野の狭さはどうしても変えられなかった…どうやっても直せなかった…。それを別のことでカバーして、誤魔化して…!」
zm「A…」
ゾムの瞳が揺らぐ。俺がここまで怒りを見せていることに動揺しているようだった。
「こんな俺よりお前は……出会った時からずっと強い。なのに……なのにあんな方法を使うなよ…!」
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作者名：あんべべ | 作成日時：2022年12月1日 19時
