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無事に勝利を収め、転送先で俺は一つ安堵の息を吐いた。
ルナの魔法を解くために駆け抜けたこの2ヶ月。その疲れが一気に出てきた気がする。
(ダメだダメだ。明日からはペイントさんたちとの特訓…ここで気を緩ませたらいけない…)
切り替えようと被りを振って頭を揺らすと、視界の端に1人の生徒が映った。
生徒達はウィンターカーニバルの打ち上げ(とも言いがたい貴族らしいパーティー)に参加しているはず。そんな中でここにいるなんてゼペルや何かあった生徒くらいだ。
もしかしたらゲームシナリオに何か異変があったのかもしれない。近づいてくる生徒にバレないよう手のひらに魔力を貯め警戒する。
zm「A」
「ぞ、ゾム様?どうしてここに…」
呼びかけられた声で生徒の状態がゾムだと分かった。白い息を空にあげる彼は、別の場所からこの男子寮まで走ってきたことがわかる。
(やっぱ何か起きたのか…?)
zm「ここはまずいか…。A、ちょっと来て」
「えっ…うわっ」
ーーー
no side
tm「…つまり。キミはゼペルさんに操られている生徒たちを助けたくて魔法で対抗した…と」
ルナは小さく頷く。
ゼペルのいなくなった学院長室で、トモによる聴取が進んでいた。
話を聞いてトモが導き出した答えとしては、ルナがかけていた魔法の効果は「正義感という想いを利用する精神支配」だった。
実際、ルナはミドリの開講している『魔法構築学基礎』を取っているため自らで魔法を構築することは可能である。
しかし…。トモはさらに尋ねる。
tm「見せてもらった魔法陣は明らかに上位の魔法。キミの覚醒段階では発動さえ難しいはずだ。…誰に
lu「…分かりません。説明を受けた筈なのに、それがどなたか思い出せなくて」
記憶阻害。光属性にもかかってしまうとなれば犯人もそれ相応の実力者であるはずだ。
tm(急に入ったアレの件も大変なのに…)
トモの髪がパチリと音を立てた。
tm「そっか。…クラシアさん、もうこれに懲りてゼペルさんにちょっかいはかけないように。だいたい邪魔して何かあるの?」
lu「それは…」
tm「学院への貢献度も充分のゼペルさんが…」
lu「知らないから…」
tm「え?」
lu「あの人は近い将来…学院に破滅を呼ぶんです」
そう言い残してルナは退室して行った。
tm「…悪役と主人公の構図みたいなこと言うじゃん」
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作者名:あんべべ | 作成日時:2022年12月1日 19時