〜chocolat cup〜 ページ38
gt「御来場の皆様!まもなく本イベント最大の企画『ショコラカップ』が開催されます!ぜひホールへと足をお運びください!また__________」
グチツボのアナウンスをBGMに俺はホール中央に用意された２つの調理台の片方で、器具の調整と食材の準備をしていた。
ht「A、これはどうする?」
「そちらに置いてもらって大丈夫です」
わかった。ある物を持ってきてくれたヒトランは他の食材と一緒に置くと、意外に重かったのか息を吐いた。
「すみません、こんな急に」
ht「大丈夫。これくらいしかサポートできないし…ショコラカップを勝つためにも、ね?」
『ショコラカップ』
ウィンターカーニバル最終日に例年行われている、いわばチョコに関するスイーツを作るコンテストの様な企画。
魔法よし、実力オンリーよし、食材も選び放題の今までとは違い自由度の高い。
参加者は腕によりをかけてスイーツを作り、完成した作品はオーディエンスに食べてもらう。観客からの投票が最も多い者が優勝。
前世でもあったお菓子のコンテストと似たシステムで勝敗が決まる。
とはいえ、ルナが何か裏で手を回したのか参加者は俺と2人のみ。
完全に想いの量でホールに来た生徒や一般客の命運をわける戦いへと変わってしまい、負けるわけにいかなくなった。
そうなっては俺は本気で挑むためにちゃんとした食材を用意する必要がある。わざわざ東国出身のヒトランに貴重な材料を用意を頼むくらいに。
lu「ゼペルさん」
「…特待生」
反対の調理場で準備をしていたルナがこちらに近づいてくる。大半の生徒を操っているためか体裁を気にしておらず、嫌なオーラを誤魔化していなかった。
怪しい。
直感的に気づいて、ルナの見えない所で食材に防護結界を張っておく。
隣にいるヒトランも警戒しているのか、声は優しいまま、目で真偽を確かめているようだった。
lu「まさかそのまま出場するなんて。驚きました」
「…そっくりそのまま返しときます。そんな顔でよくもまぁ…。先輩、間も無く始まりますので」
ht「分かった。頑張って、A」
軽く手を振ってヒトランはオスマン達が座っている観客席へと行った。
lu「…絶対に私が目を覚まさせる」
「目を狂わせる、でしょう?」
lu「笑わせないで」
くるりとまた自分の調理場へと戻って行く。
覚まさせる。その考えはなぜ生まれたのだろう。
(…そんな発言、まるでプレイヤーみたいだな)
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作者名：あんべべ | 作成日時：2022年12月1日 19時
