・ ページ45
ゾワリ、と体温が急激に落ちる感覚。
まさかまたヨーグがここへ?それとも他に調査を進める者が?あるいは教師によるもの?
フードの中で思考をこれ以上かと巡らせる。
勘のいいアイツが悟らないように、Aが気づかないように。
ut「だ、大丈夫なん…?ていうかなんで怪我がこんな中途半端に放置されとるん…⁉︎」
即座に回復魔法をかけようとする大先生をAは止めた。バレたらそっちも危うくなる、と。
「回復魔法もかけられてはいますから、またそのうち治りますので」
zm「てことはもう何度か怪我させられとるってことか」
体へと入る毒やここ数日の疲労感や尋問のせいか、Aは珍しくボロを出した。普段とは違い話す内容を深くまで考えられていないのだろう。
「で、でも見た目の割にはそこまでひどくないし、だいじょっ……⁉︎」
数日前のように、Aが胸を押さえて痛みに苦しみ出した。前へ倒れ込んでしまいそうな所を支えて、ベッドへと座らせる。
どこにも行く気なんてこちらは無いのに、Aは片手で俺の手を強く握っていた。
(かわいい)
心配と共に愛くるしさを感じ、つくづく俺もあの教師のことを言えないな…と思う。
大先生もただ事では無いと察しAの隣は座りそっと背中をさすっていた。
「……はぁ」
痛みが治ったのか、Aは後ろへと倒れ込む。
2人揃って慌てたが、頬を膨らませジトリと天井を見ているAについ笑ってしまった。
頬をつつけば空気が勢いよく抜け、更に笑わせてくる。気に入らないのか彼は目を閉じた。
「痛かった…」
zm「見たらよぉわかる」
「ここ最近の全部」
ut「うん…」
大先生は俺がするよりも先にAの頭を撫でた。チラと表情を見れば、数年ぶりに見る崩れかけの顔。
彼が目を瞑ってて良かったなと後で言ってやろう。その表情を今のAには見せないでほしい。
もし見せてしまったら。自分の状態を気にせず手を差し出すに違いない……がそんな事したらアイツの思う壺だ。
きつめに言っておこう。
「そういえばなぜここに?」
ut「Aちゃんがここにいるかもって、ゾムが見つけてくれたんよ」
へぇ、と感情の掴めない声色で反応するA。水しか出すものないよ、とボケなのか本当に思っているのかわからない返しをされる。
ut「今飲んだ方がええのはAちゃんやない?持ってこよか?」
「お願いします」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 866人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんべべ | 作成日時：2021年12月1日 18時
