恋愛ゲームの悪役に転生。だが男だ Ⅵ【男主】 (ページ22)

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指先という名の照準をショッピへ合わせる。
何をするかわかっているだろうに、俺と目を合わしているのは苦しいだろうに。

lu「…!ショッピくん逃げて！！」

主人公の耳障りな声が後ろから響く。
しかし彼は動こうとはしなかった。

「撃ってもいいんだ」

複数の魔法弾を生み出してもショッピは微動だにしない。

(…!?)

それどころか。彼はこちらに笑みを向けてきた。
柔らかくて、暖かさを感じる……俺に向けるべきではない笑みを。

shp「ええよ」
「…やめろ！！」

心を這いずる何かが悲鳴を上げた。
やめろ、そんな目をするな、見ないでくれ…と。

当然。俺自身にとってもそれは恐れでしかなく。生み出した魔法弾をショッピ目掛けて撃ち込んだ。
(見せないで、その目はなぜ、怖い…！)

今までにそんな表情を向けられた事はないんだ。そもそも向けられるような存在と肯定されたこともないんだ。

よくわからない感情と恐怖で黒く染まった心が悲鳴を上げた。
ピキ、ピキ、と頭の中でひび割れる音が聞こえる。
なんの音だろう、初めて聴いた音…。

魔法弾を全て撃ち込んだ頃には、砂埃で何も見えない状態となっていた。
そこにひとつの風魔法が発動される。

砂埃が勢いよく晴れたと思えば人影が1つ。

「ショッピ……」

彼は先ほどと変わらない位置に立っていた。
掠った様な傷はいくつかあるものの、致命的な被害は一切無い。

そしてショッピの立つ周りや後ろの煉瓦塀には未だ煙を立てている魔法弾の跡がはっきりと残っていた。

shp「ゲホっゲホ……な?撃ってもええって言ったやろ?」

あり得ない、と自分の手のひらを見る。
屋敷の使用人たちに鍛え上げられていた射撃能力はどこへやら。全ての魔法弾を外していた。

俺は何が何だかわからず手を見たまま固まる。
…しかしそれがより魔力の暴走を促した。

shp「A後ろ!」
「…ぁ」
lu「貰った！！」

右腕が赤く染まる。
主人公によって発動された魔法弾が、いつかのときみたく命中してしまった。

ピキ、ピキ。また音が鳴る。

「……あーあ」

奥底にいるやつが笑った。なんて最悪な主人公と。

治ってスッキリしていた頭痛と眩暈、意識の混濁。
溢れる様な黒いドロドロの液体が洪水を起こすかの如く頭の中と心をぐちゃぐちゃに掻き乱す。

先程よりも強い衝動に、飲まれる以外俺にはなかった。