恋愛ゲームの悪役に転生。だが男だ Ⅵ【男主】 (ページ21)

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次に目を開けた際、主人公が元に直した筈の中庭がまた死の世界を描いていた。

(へぇ、こんな元気になれるんだ)

今までの体調不良や頭痛たちが嘘みたいに消え去り、視界は心とは対照的に澱みも濁りも無くなっていた。

ut「…Aちゃん」

意を決したかのようにウツが声をかける。
その表情は普段のひょうひょうとしたものではなく、"何か"に対して感情を向けているものだった。

(…何かってなんだっけ?)

「ウツ様」

手をウツの方へ向けようとすれば、気味の悪い魔法が飛んでくる。
すぐさま避けて瞳だけをギョロリ。

視線の先には怒りと恐怖に塗れた表情を浮かべる主人公の姿があった。

lu「やっぱり…貴方が犯人だったんだ……‼︎」

何言ってるんだこいつ / 内心喜んでるくせに。
苛立ちと共に真っ黒いハートから攻撃衝動を促され、俺は魔法弾を数発飛ばした。

旧式の魔法陣で放つ黒い魔法弾。
当然ながら、今の主人公の力では破壊することもできずましてや有利に働くことのない旧式のため、ひたすらに逃げ続けるしかない。

どうして利かないの、と徐々に恐怖の色へと変わっていく表情にひどく心は昂った。

今までの鬱憤か、ゲーム内で散々倒されてきたゼペルの怒りか。それとも前世で俺を散々苦しめてきたような奴らに似ているからか。

劣勢に追い込むことが快. 楽にも近い感覚へと変わっていく。
なるほど、優位な立場にいた者はこの様な感覚を味わっていたのか。確かに中毒性は高いし蹴落とされそうになれば人格豹変だって起こる。

「……ヒヒヒッ」

思わず笑い声が漏れた。
いつかの期末試験の時みたく、俺の表情は悪役そのものだろう。

底で同じ様に笑う"誰か"。そうね、やはり楽しまなくてはとより一層の衝動を掻き立ててくる。

rb「ストップやA！！」

しかし享受し続けることは叶わない。
いつのまにか此方まで来ていたロボロが俺の足元へと矢を放つ。

俺が魔法弾を止める。直後、周りには薄紫色の電流が包囲網の如く敷き詰められた。

笑顔が崩れる事はなく。剥がれない笑顔のまま後ろへ振り向き、そこにある瞳を見た。
ショッピの苦しげに歪んだ表情、やはりアイツは気味が悪いほどに察しがいい。

だが…

「今は邪魔でしかないよ」
shp「……」

照準を、ショッピへと向けた。