・ --pause-- ページ47
いつもの癖で、音を立てずにドアを閉める。
ぼふ、とベッドへ倒れ込んだ。
自分の手をじっと見つめ、ため息を１つ。
zm「あ"ーーーもう、ズルいやんかぁ…」
ーーー
30分ほど話していれば、教師が様子を確認しに来る時間となったため少し寂しさもあったが寮へ戻ることに。
ut「Aちゃんじゃあな」
「ええ。今日は来てくださりありがとうございました」
手をひらひらと振って大先生は外へ出る。俺も続いて出ようと窓枠へと足をかけた。
「ゾム様」
Aの小さくて細い指に絡められた。
先に塔を出たアイツには絶対にバレない位置で、そっと手が包まれる。
ひんやりとした何かが当たり手元を見れば、真ん中に美しい宝石を飾る金色の指輪が1つ。
「また今度」
そう言った後、今まで見たことのない表情で彼は笑った。
ーーー
正直、あのふにゃりと笑った顔を見た後の記憶が抜けている。
帰って自室に戻るまで、大先生と何を話していたのだろう。というかどうやって帰ってきたのだっけ?そのまんま飛んで戻った?
zm「あかんやろあんなん……」
ぺたり。額へだらしなく手の甲が落下した。
指輪だってなぜ突然貰ったのかわからないし、そこから畳み掛けるように笑顔を見せたA。
思い返せば今日はどこか俺に対しての態度が普段と違かったかも。…まあ、だからこそ大先生と話すだけでも妬いたのだが。
zm「微量の砂糖も十分すぎる甘さ…なんか?」
だとすれば、あの猿はなんて魔法を開発したんだ。そして弱っていても容赦なく砂糖を注いだならばなんて鬼。ブルーベリーのような青色の鬼なんているのか知らんけど。
大きなため息が部屋に零れる。
ヨーグが来たあの日に、少しでもこの砂糖を使わなければ良かったかもしれない。砂糖に溺れたのは俺もではないか。
包まれた暖かさと、指輪のひんやりとした冷たさ、まるで光のような笑顔。どれもが掴んで離さない。
zm「もっと…」
側にいたい、いさせて。
独占欲とはまた違う形容し難い感情で心が染まる。
その為なら……
深呼吸を一度。そして目を開く。
どこかで久方ぶりのカラスの声が響く。
窓の外では月が赤く染まっていた。
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作者名：あんべべ | 作成日時：2021年12月1日 18時
