検索窓
今日:5 hit、昨日:35 hit、合計:214,300 hit

五十九冊 ページ9

帝光中には、食堂と購買がある。

お昼の時間帯は食堂が圧倒的人気らしく、人混みが苦手な私にはとてもありがたい。


購買のそばに備え付けられた自販機をジッと見つめる。

どれを買おうかと悩んでいると、後ろから「よう」と声をかけられた。



「…虹村主将」

「何気にお前と偶然会うのは初めてだな」

「そうですね」

「お前もパン買いに来たのか?」

「いいえ、私は飲み物を買いに来ました」



そう言って首を振ると、虹村主将は不思議そうな顔をする。

何か変な事を言っただろうか。



「お前、弁当派か?」

「いえ。強いていうなら何も食べない派です」

「…はぁ!?」



…そんなに驚く事だろうか。



「部活であんなに動いてるくせに何も食ってないのかよ!?」

「はい」

「おまっ…はぁぁ。いいか、よく聞けよ」



グワシッ

虹村主将が私の頭部を鷲掴む。

力加減が上手く、絶妙に痛くない。

でも圧を感じる。



「いくら朝飯食ってようが、昼も食べなきゃ…」

「朝ごはんも今日は食べてません。ラノベを1巻から見直して…てててて」

「…」



無言で頭部を掴む手に力を入れられる。

心なしか黒いオーラも出ている気がする。

主将、副主将になると黒いオーラを出さなくてはならないというルールでもあるのだろうか。



「…待ってろ」



それだけ言って、虹村主将は購買で何かを買い始める。

なんだったのだろう。

そう思いながら暫く悩んだ末、お茶のパックを買おうとすると。



「お前はカロリーを取れ」



ピッ

ガタンッ

後ろから伸びた手が、いちごオレのボタンを押した。



「…いちごオレ」

「お前マジバでいちごシェイク飲んでたから、飲めないわけじゃねーだろ」

「…」

「で、あとはこれな」

「ブッ」



顔に何かを押し付けられて、変な声が出た。

押し付けられたものは、パンが沢山入った紙袋。

顔が引きつりそうになるのをなんとか抑え、そっと視線を上げる。

視界に入ったのは、雑誌の取材用の爽やか笑顔を浮かべた虹村主将だった。



「よし、飯食うか」

六十冊→←五十八冊【虹村修造】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (175 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
449人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マカロン食べたい(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!!これからも楽しみにしています! (2020年1月21日 23時) (レス) id: 048debb475 (このIDを非表示/違反報告)
レナナミル♪(プロフ) - めっちゃ久しぶりだから更新してくれて嬉しいです! (2020年1月21日 21時) (レス) id: aefdd45bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ししざ(プロフ) - 続編書いてくださって有難うございます。更新がんばって下さい! (2020年1月21日 21時) (レス) id: d79b43c1be (このIDを非表示/違反報告)
lkwisterven - ミリイ(灰崎信者)さん» うーん…もう出しちゃったから出して欲しくないはもう無理だと思う。だけど、出さないで欲しいならオブラートに包んで、敬語で言うべきだと思います。 (2019年9月6日 16時) (レス) id: c9c05fe7f4 (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - この小説に祥吾様出して欲しくない (2019年7月7日 23時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のんびりん | 作成日時:2018年8月20日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。