仕事人間後輩の不思議な影響【続編】

五十八冊【虹村修造】 ページ8

親父が入院して、少し笑う機会が減った気がする。

心配なのは勿論のこと、問題はもう１つあった。


自分がバスケ部の主将だということ。


親父に何かあった場合俺は冷静ではいられないと思う。

大事な試合があろうと学校でテストがあろうと、恐らく俺は全部投げ出して病院に向かう。


主将の肩書きは、部に混乱を招く可能性のある俺より…赤司に譲るべきだ。


だが、１、２年の頃の記憶、必死に俺を主将に後押ししてくれたチームメイトの事を思い浮かべると迷いが生まれる。

とうすりゃいい。



頭がぐちゃぐちゃになるくらい考えて。

その結果、主将をやめる事を決意した……そんな時だった。



『新刊を手に取った時より、親の方がずっと幸せです』



表情筋をピクリとも動かさずに、そう言い切った後輩が現れたのは。


赤司が目をつけてて、あの桃井や青峰達が気にしているマネージャー。


合宿に参加してくれるお礼に、と無理やり連れてきたマジバで、こいつは見事に俺を笑わせた。

そりゃもう、盛大に。

涙出るくらい笑って、食べまくって、気が緩んだのか自然と出た二択。

馬鹿正直に答えた後輩。

ポッカリ空いていた小さな穴が、ゆっくりと埋まっていく感覚。



…明日からはもっと笑おう。



なんとなく、そう思った。




「お会計きゅうひゃ…くブフッ！！」

「…スマイルは結構ですから」

「す、すいま、…せッん！」




とりあえず、笑わせにかかってくるのはやめてくれ。

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