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九十冊【赤司征十郎『僕』】 ページ40

「すまないね、夜遅くに呼び出してしまって」

「いえ、別に」



私たちが今いるのは、合宿所の庭のような場所。

手入れが行き届いていて、とても居心地がいい。



「ふふ。僕に呼び出されていつも通りの態度のお前は、やっぱりすごいな」

「ありがとうございます。…ん?」



あれ、なんか違和感が。

なぜだかわからないけど、今の赤司先輩にものすごい違和感を感じる。



「どうかしたのか?」



首を傾げて、微笑む赤司先輩。

視線が交わる。


どれくらい見つめ合っていたのかは分からないけれど、1つだけ気づいた。



「雰囲気が違いますね」

「何のことだ?僕はいつも通りだよ」

「あぁ、あと一人称も変わってる。私の記憶では赤司先輩は自分のことを俺と言っていた筈ですけど」

「…お前はつくづく厄介だね、本当に」



赤司先輩の右手が私の左頬に優しく触れた。

風が、先輩の赤い髪をさらう。


姿形は全く変わっていない。

でも、さっきから感じるこの威圧感も、顔に張り付いている笑みも。

全部が私の知っているものとは違った。



「助けてやろう」

「はい?」



先輩の言葉に、思わず素っ頓狂な声が出た。

助ける?何から、誰を。



「言っている意味がわからないのですが」

「竹田 亜美」



ガンッと、鈍器で頭を殴られたような。
そんな感じがした。



「この名前に覚えはあるかい?」

「…」

「あぁ、ないわけないか。君の兄妹仲をかき乱した者の名前なんだから」

「なんでその名前、」



いや、知ってて当然だ。

彼は方法はわからないにせよ、私の過去を知ってるようだった。

それなら、名前を知ってても何もおかしくない。



「桃井とその女が重なって見えているのだろう?大切な先輩と大切だった友達が重なるなんて、辛い話だ」

「…何が言いたいんですか」

「僕ならば君のお兄さんのことだって、竹田亜美の事だって解決することが…」



スッパーーーン!!

静かな庭に響く音。

ポカン、と目を見開き呆然とする赤司先輩。

私の手に収まっているラノベ。

そう。私はあの完璧チート、様付きで崇拝される赤司征十郎の頬を思いっきり引っ叩いたのだ。

ラノベで。

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マカロン食べたい(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!!これからも楽しみにしています! (2020年1月21日 23時) (レス) id: 048debb475 (このIDを非表示/違反報告)
レナナミル♪(プロフ) - めっちゃ久しぶりだから更新してくれて嬉しいです! (2020年1月21日 21時) (レス) id: aefdd45bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ししざ(プロフ) - 続編書いてくださって有難うございます。更新がんばって下さい! (2020年1月21日 21時) (レス) id: d79b43c1be (このIDを非表示/違反報告)
lkwisterven - ミリイ(灰崎信者)さん» うーん…もう出しちゃったから出して欲しくないはもう無理だと思う。だけど、出さないで欲しいならオブラートに包んで、敬語で言うべきだと思います。 (2019年9月6日 16時) (レス) id: c9c05fe7f4 (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - この小説に祥吾様出して欲しくない (2019年7月7日 23時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のんびりん | 作成日時:2018年8月20日 18時

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