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八十七冊 ページ37

「…」

「…」



ふわ、小さくあくびをしつつ、小説のページを捲る。

車内で文字を読むと酔いやすいというが、私は意外と酔いには強い方らしく気にしない。

こんな穏やかな気分で本が読めるのは、私の運のおかげだろう。


隣の席で腕を組み、目を閉じる赤司先輩に一瞬視線を向けそれを実感する。

今、私は合宿所に向かうために適当に決められたバスに乗り、更に決められた席に腰を落ち着かせている。

このバスには騒がしいことで有名な先輩方はいない。

私の隣に腰を下ろす赤司先輩、そして少し離れた席に緑間先輩、そして三年の先輩達。

しかも、みんな合宿のための体力を温存だと言わんばかりに寝ている。

本当、当たったバスがよかった。

隣の席が赤司先輩というのは若干怖いが。



「A」

「っ、」



いきなり隣から発せられた私の名前に、思わず小説のページを捲ろうとした手が止まる。

赤司先輩は、私のことを佐藤と呼んでいたはずだ。



「無視とは、傷つくな」

「大して傷ついているように見えないのですが」

「そんなことないさ」



ふふふ、と相変わらずの上品な笑みを浮かべる彼は、閉じていたはずの目を開き綺麗な瞳をのぞかせる。



「合宿所に着くまで暇だし、雑談でもしないか?」

「…はい」



口調は提案、目は命令。

断るのは無理そうだ。

諦めて小説を閉じると、彼はニコリと笑った。



「A、お前は聞き覚えがいいね。青峰や黄瀬達もそうだといいんだが」

「あの、」

「ん?」

「私の記憶が正しければ、赤司先輩は私のことを佐藤と呼んでいたはずですが」

「あぁ、そうだった。これからは名前で呼ばせてもらうよ」



いや、意味がわからん。



「何か問題でも?」

「…いいえ、ありません」

「ならよかった。桃井達が名前を呼んで良くて、俺がダメなんて不公平だからね」

「…」

「体育館では必ず、桃井がAと叫ぶ声が響いていたが…あぁ、そういえば最近聞かないな」

「わかってて言っているところ、よりタチ悪いです先輩」



少し細められた目。

この人、本当にタチが悪い。

全部わかっているくせに、まわりくどいところとか尚更に。



「まぁ、人をなんと呼ぶかは人次第ですし。あまり佐藤と呼ばれるのも好きじゃないですから」



そう言って、失礼ながら赤司先輩から視線を外し、窓に向ける。

空はとても綺麗な青一色で、無性に腹が立った。

…最近苛立つことが多い。

カルシウム不足だ、きっと。

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マカロン食べたい(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!!これからも楽しみにしています! (2020年1月21日 23時) (レス) id: 048debb475 (このIDを非表示/違反報告)
レナナミル♪(プロフ) - めっちゃ久しぶりだから更新してくれて嬉しいです! (2020年1月21日 21時) (レス) id: aefdd45bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ししざ(プロフ) - 続編書いてくださって有難うございます。更新がんばって下さい! (2020年1月21日 21時) (レス) id: d79b43c1be (このIDを非表示/違反報告)
lkwisterven - ミリイ(灰崎信者)さん» うーん…もう出しちゃったから出して欲しくないはもう無理だと思う。だけど、出さないで欲しいならオブラートに包んで、敬語で言うべきだと思います。 (2019年9月6日 16時) (レス) id: c9c05fe7f4 (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - この小説に祥吾様出して欲しくない (2019年7月7日 23時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のんびりん | 作成日時:2018年8月20日 18時

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