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七十四冊 ページ24

すごい人だな、やっぱり。

2年の教室で売っていたトマトジュース片手に、人が行き交う廊下を歩く。

中庭に行くために階段を降りようとすると、後ろからガシッと肩を掴まれた。

嫌な、予感が。

そっと後ろを見る。

そこには、キラキラと直射日光のように眩しい笑顔の田中先生がいた。

…終わった、私の帝光祭。








***

「さぁ、飲んで食うんだ佐藤!」

「…はあ」



帝光祭では役目を与えられなかった場所、生徒指導室のテーブルに並べられた学祭ならではの料理。

そして、いかにもカロリーの高そうなカラフルジュース。

似たような行動を、虹村さんがとっていた気がする。

これがデジャブというものか。



「前から気になってたが、お前は細すぎだ。カロリーを取れ!」

「いや、でも…悪いですし。いくら担任とは言えここまで気遣っていただくわけにはいきません」

「気にするな!先生は、佐藤に幸せになって欲しいからな!」



そう言って楽しそうに笑う田中先生。

行動も顔もイケメンだが、1つだけ言わせて欲しい。

何回も言うが、私の幸せを願うなら放っておいてはくれないだろうか。

そう言いたいが、先生の期待の眼差しに負け渋々料理に手をつける。

美味しい。



「佐藤、部活は楽しいか?」

「はい」

「どんなことが楽しい?」

「やりがいがあって楽しいです」

「怪我とかしてないか?」

「大丈夫です」

「あまり無理するなよ。頑張りすぎるのはお前の悪い癖だ」

「体調管理は自分なりにしているつもりです」

「いじめられたりしてないか?」

「本当に、大丈夫ですから」



…なんだか、心配性な父親と話しているような気分だ。

そう思いながら言葉を返すと、先生は「でもなぁ…」と呟きながら何かを考え込み始めた。

ハラハラという効果音が聞こえてくるのは、きっと気のせいだろう。


結局、私が解放されたのはそれから1時間後の事だった。

七十五冊【紫原敦】→←七十三冊【赤司征十郎『俺』】



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マカロン食べたい(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!!これからも楽しみにしています! (2020年1月21日 23時) (レス) id: 048debb475 (このIDを非表示/違反報告)
レナナミル♪(プロフ) - めっちゃ久しぶりだから更新してくれて嬉しいです! (2020年1月21日 21時) (レス) id: aefdd45bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ししざ(プロフ) - 続編書いてくださって有難うございます。更新がんばって下さい! (2020年1月21日 21時) (レス) id: d79b43c1be (このIDを非表示/違反報告)
lkwisterven - ミリイ(灰崎信者)さん» うーん…もう出しちゃったから出して欲しくないはもう無理だと思う。だけど、出さないで欲しいならオブラートに包んで、敬語で言うべきだと思います。 (2019年9月6日 16時) (レス) id: c9c05fe7f4 (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - この小説に祥吾様出して欲しくない (2019年7月7日 23時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のんびりん | 作成日時:2018年8月20日 18時

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