七十二冊【赤司征十郎『俺』】 ページ22
「大丈夫か?」
「はい、なんとか」
少しクラクラする頭部に手を当てつつ、心配してくれているらしい赤司先輩に言葉を返す。
先輩のおかげでなんとか田中先生から解放された私は、何故かわからないが空き教室に連行されていた。
「あの、なぜ空き教室に」
「人気が全くない場所といえば、ここくらいしか思いつかなかった。すまない」
「それは構いませんが」
そう言うと、赤司先輩は「そうか」と微笑む。
「…1つ言いたいことがあったんだ。そのためにここに連れて来た」
「言いたいこと?」
「お前に、くだらない嫌がらせをする女子生徒について」
「…」
「その様子だと、忘れてたみたいだね」
「佐藤らしい」とクスクス笑う赤司先輩。
確か、集合時間を早く伝えられたり仕事を多く任されたりと…とてつもなく小さな嫌がらせをされていたんだった。
彼の言う通り、あまりにもくだらなかったため忘れていたのだ。
「その事なら大丈夫です。本当に小さな嫌がらせばかりなので」
「だが、いつまでもくだらない嫌がらせだけが続くとは限らない」
「…」
「欲望に目が眩んだ女子は厄介だ。…お前はそれを、“よく”理解しているだろう?」
「…はい」
先輩が、私の髪の毛に触れる。
肩につくことのない、短い短い髪の毛。
赤司先輩がなぜあの事を知っているのかはわからないが、疑問は持たない。
この人は、なんでも見透かしてしまいそうな目をしているのだから。
「赤司先輩は、なぜこんなお祭りムードが漂うタイミングでこの話を切り出したんですか」
「このムードだからだよ。祭り事などの行事類以上に、感情のコントロールが効かなくなる日はない。
そして、帝光祭ではあいつらが何も考えず君に接触するだろう」
簡単に言えば、帝光祭中はバスケ部レギュラーファンの女子に気をつけろ、ということか。
「…忠告ですか」
「あぁ。昔の二の舞になりたくなければ、気をつける事だ」
「…」
本当、この人の言う言葉は全て実現してしまいそうで怖い。
それになにを言えば響くか、どんな言い方をすれば理解するか。
それを全て分かっているからこそ、余計に厄介だ。
サラサラと、赤司先輩の手の中に収まっていた髪が重力にならい落ちていく。
全ての髪が落ちたところで、先輩は再び口を開いた。
「俺が、助けようか」
449人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マカロン食べたい(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!!これからも楽しみにしています! (2020年1月21日 23時) (レス) id: 048debb475 (このIDを非表示/違反報告)
レナナミル♪(プロフ) - めっちゃ久しぶりだから更新してくれて嬉しいです! (2020年1月21日 21時) (レス) id: aefdd45bb5 (このIDを非表示/違反報告)
ししざ(プロフ) - 続編書いてくださって有難うございます。更新がんばって下さい! (2020年1月21日 21時) (レス) id: d79b43c1be (このIDを非表示/違反報告)
lkwisterven - ミリイ(灰崎信者)さん» うーん…もう出しちゃったから出して欲しくないはもう無理だと思う。だけど、出さないで欲しいならオブラートに包んで、敬語で言うべきだと思います。 (2019年9月6日 16時) (レス) id: c9c05fe7f4 (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - この小説に祥吾様出して欲しくない (2019年7月7日 23時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:のんびりん | 作成日時:2018年8月20日 18時