32:狼ゲームの開幕 ページ32
突如響いた悲鳴に身体が強張る。他の人達も少なからず驚いたようで、悲鳴がした方へと顔を向けた。
「ひ、悲鳴!?」
「とうとう最初の狼が動いたのかな?」
「そ、そんな…!」
「と、とにかく行こう、ここでこうしてても何も分からない」
「そうだね♪ユウリちゃん、大丈夫?」
「ぅ…は、はい…大丈夫、です…」
何とかリンタロウさんに返事をする。
全然大丈夫じゃなかったけど、こんな所で心配をかけるわけにはいかない。
それにまだ、ゲームが始まったと決まったわけじゃない。この状況下で悲鳴を聞いて、勝手に判断してしまっているだけだ。
震える私の手をリンタロウさんがギュッと握る。ゆっくりと顔を上げれば、優しく笑っているリンタロウさんの顔が目に入った。
「…大丈夫。きっと、大丈夫だよ。ね?」
「………」
「もし狼が動いてたんだとしても…ユウリちゃんだけは、僕が護るから」
ポンポン、と幼子をあやすように頭を撫でられる。
どうしてリンタロウさんはこんなに私を甘やかしてくれるんだろう。そのリンタロウさんの優しさに縋ってしまっている私も私だけれど。
気を落ち着かせてから悲鳴が聞こえた場所へと向かう。そこには扉の前に座り込むミサキさんが居た。
ミサキさんは震える指で植物室の中を指差す。
「あ、あれ…」
「あれ…?っ、きゃあぁああ!?」
「ユウリちゃん!!」
ミサキさんが指差したもの…ミホさんの死体を見て、我を忘れて叫んでしまった。取り乱す私をリンタロウさんがギュッと抱きしめてくれる。まるで、それを見るなとでも言うように。
だけど脳裏に焼き付いてしまったそれは、視界から消えただけでは忘れる事は出来なかった。
必死にリンタロウさんにしがみつく。人の死を目の前にしたせいか、自分が今生きているのだという確証が持てなくなる。
とうとう、始まってしまった。誰も、殺したくなかったのに。現実でも私は助けなかった。
悲鳴を聞きつけて別行動をしていた人達も集まってくると、ミホさんの死体を見て顔をしかめた。
「これって…狼が殺したってことだよね…?」
「まあ…そうだろうな…」
「つまり…本当に狼ゲームが始まってしまったということか…」
『え、えっと!早速狼が羊を殺したんですね!』
「うわっ!び、びっくりした…」
どこからか現れたメリーがどこか楽しそうに言う。主催者の代理なのだから、ゲームが始められて嬉しいのかも知れない。
メリーはぴょこぴょこと跳ねながらミホさんの死体に近付いた。
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夕霧(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます!私の文章でリンタロウの可愛さやかっこよさを表現出来ているか自信がありませんでしたが、そのように言って頂けて本当に嬉しいです。書きたい事が多く遅々とした展開となっていますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2018年7月6日 23時) (レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - あぁぁぁあー。リンタロウ可愛い!かっこいい!作者さん天才ですよね!?!?更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2018年7月6日 0時) (レス) id: ca55176d45 (このIDを非表示/違反報告)
akasiro814(プロフ) - ご指摘、ありがとうございました。オリジナルフラグを外しました。初めて使用するとはいえ、迷惑をかけてしまってすみません。今後、気をつけていきます。 (2018年7月1日 16時) (レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
@ - オリジナルフラグ外してねー編集画面を隅々までよく読んで (2018年7月1日 14時) (レス) id: da2bf38fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:時雨 | 作成日時:2018年7月1日 14時