24:狼と狼の攻防戦 ページ24
ゆっくりと目を開ければ、頭を抱えるリンタロウさんとどこから取り出したのか薄い本を持っているユキナリさんが目に入った。察するにユキナリさんがリンタロウさんを本で叩いたんだろう。
……それは痛い。多分ちゃんと本の平面で叩いたんだろうけれど、それでも痛い。
そして頭を抱えているリンタロウさんを見下ろすユキナリさんの目がとてつもなく冷たいような気がする。
「いっ…たいなぁ〜、何するのさユキナリくん!」
「ゴメン、何か無性に腹が立って。それにユウリさん困ってたから流石にちょっと」
「ぇ、と、り、リンタロウさん、大丈夫ですか…?」
「うぅ、大丈夫じゃない、僕死んじゃうかも…」
「えぇえ!?ど、どうしよう、早く手当てしないと、」
「聞いて…ユウリちゃんにしか出来ない手当があるんだ…それじゃないと、僕死んじゃうんだ…!助けてくれる?ユウリちゃん…」
「も、もちろん!私に出来る事なら!」
苦しそうにするリンタロウさんの手をギュッと握る。
打ち所が悪くて脳震盪でも起こしてしまったんだろうか。でも医療の知識がない私にはそんな時にどうしたら良いのかなんて分からない。サトルさんは知っているかもしれないけど、呼びに行く時間はないだろう。
今の所なんの役にも立てていない、というか足を引っ張ってしかいないんだから、こんな時くらい役に立たないと…!
「良かった…じゃあ…僕の頭、ユウリちゃんの膝に乗せて…」
「はい、分かりました!」
「もっと顔、近付けて…」
「こ、こうですか?」
「ううん、遠いよ…もっと近くに…」
「へっ!?こ、こうですか…!?」
「全然遠いよ、もっと一気に…いたっ!」
「そろそろ本題に戻って良いかな?」
ポツリポツリと呟くリンタロウさんの声が再度途切れた。見れば、ユキナリさんがリンタロウさんの足を踏んでいる。相当苛立っているようだ。
いやでも、怪我人にそんな事…と思っていたら、リンタロウさんが顔をしかめながら起き上がった。
びっくりしてリンタロウさんの顔を見る。…特に顔色が悪いようには見えない。少し横になって、楽になったんだろうか。
渋々起き上がったリンタロウさんはユキナリさんを睨みつけると地を這うような声でボソリと呟いた。
「…僕が狼になったら絶対お前殺してやる」
「そう。じゃあ今のうちに「俺を殺したのはリンタロウです」って遺書でも書いておこうかな」
「あの…こ、殺さないでくださいね?」
何故か険悪になる2人に思わず呟いてしまった。
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夕霧(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます!私の文章でリンタロウの可愛さやかっこよさを表現出来ているか自信がありませんでしたが、そのように言って頂けて本当に嬉しいです。書きたい事が多く遅々とした展開となっていますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2018年7月6日 23時) (レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - あぁぁぁあー。リンタロウ可愛い!かっこいい!作者さん天才ですよね!?!?更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2018年7月6日 0時) (レス) id: ca55176d45 (このIDを非表示/違反報告)
akasiro814(プロフ) - ご指摘、ありがとうございました。オリジナルフラグを外しました。初めて使用するとはいえ、迷惑をかけてしまってすみません。今後、気をつけていきます。 (2018年7月1日 16時) (レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
@ - オリジナルフラグ外してねー編集画面を隅々までよく読んで (2018年7月1日 14時) (レス) id: da2bf38fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:時雨 | 作成日時:2018年7月1日 14時