２２：記憶にないモノ ページ22
しばらくリンタロウさんと言い合った後、ユキナリさんは我に返ったように咳払いをした。
正直、２人が何を言い合っていたのかは応酬が激しすぎてよく分からなかったのだけど、リンタロウさんは頗る楽しそうだ。
ニコニコと「もう良いの？」と首を傾げるリンタロウさんに、ユキナリさんは「良くないよ！」と突っ込む。
「そうじゃなくて！俺、気になるものがあるって言ったよね？」
「うん、言ってたね♪」
「実は、これなんだけど…」
「わぁ…可愛いアンティークの懐中時計ですね」
ユキナリさんが取り出したのは、可愛い装飾が施されているアンティークの懐中時計だった。細い鎖で繋がったそれは、部屋の明かりを受けてキラキラと光る。
だけど、私の反応を見たユキナリさんは渋い顔をした。
「これ、見覚えないかな？」
「うーん、僕は無いかな♪アンティークって良く分からないし」
「私も…興味はありますけど、見た事はないと思います…」
院長先生はアンティークが好きで、集めたものを飾る部屋を作っていたけれど、孤児院にもこんな物は無かったと思う。こんなに綺麗な時計なら、見たら忘れられないだろうし。
ユキナリさんは「そっか、」と呟くと、そっと懐中時計の蓋を開けた。
やっぱりと言うべきなのか、時計は動いていなかった。だけど壊れてはいないようだったから、すぐ使えるだろうけど。
「動いてないねー。壊れちゃってるのかな？」
「ハンターケースのナポレオンですね。機械式みたいなので、今でも使えると思いますよ」
「ナポレオン？ってあの、フランスの英雄？それがなんで懐中時計に関係するの？」
「ええと…こういった蓋がついている懐中時計をハンターケースって言うんですけど…こんな風に蓋を閉じた状態でも針の一部が見えて時刻が読めるようになっているタイプの懐中時計を総称してナポレオンって言うんです。院長先生の受け売りですけど」
「へー。で、この懐中時計がどうしたの？」
「うん、この蓋の部分を見て欲しいんだけど…」
ユキナリさんは文字盤ではなく蓋の内側を指差す。見れば、そこには文字が彫られていた。
少し錆びていて見にくいけれど、読めないわけではない。
じっと見ていたリンタロウさんがその文字を口にした。
「『Dearユウリ、Toユウヤ』…？ユウヤって誰？ユウリちゃん」
「へっ！？え、あの、いや…だ、誰…ですかね？」
何故か不機嫌になったリンタロウさんに詰め寄られる。
だけど私もユウヤさんなんて人は知らなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夕霧(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます！私の文章でリンタロウの可愛さやかっこよさを表現出来ているか自信がありませんでしたが、そのように言って頂けて本当に嬉しいです。書きたい事が多く遅々とした展開となっていますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2018年7月6日 23時) (
レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - あぁぁぁあー。リンタロウ可愛い！かっこいい！作者さん天才ですよね！？！？更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2018年7月6日 0時) (レス) id: ca55176d45 (このIDを非表示/違反報告)
akasiro814(プロフ) - ご指摘、ありがとうございました。オリジナルフラグを外しました。初めて使用するとはいえ、迷惑をかけてしまってすみません。今後、気をつけていきます。 (2018年7月1日 16時) (レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
@ - オリジナルフラグ外してねー編集画面を隅々までよく読んで (2018年7月1日 14時) (レス) id: da2bf38fbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：時雨 | 作成日時：2018年7月1日 14時
