２：始まりの鐘 ページ2
目を開けたはずなのに見える物が何もない。不思議に思って体を起こそうとすれば、どうやら私は椅子に座っていたようだった。
…確か、読書に疲れてベッドに倒れ込んだ筈なんだけど。
いつの間にか運ばれたんだろうか。あの人ならやりかねない。
そう思ったけれど、それならそれでこんなに暗い部屋に座らされる理由が分からなかった。
恐る恐る立ち上がる。夢の中よりは明るい薄暗がりの中で、目の前に扉があるのが見えた。
簡素な作りのそれは、やっぱり見覚えがない。ゆっくりと近付いてドアノブを回しても、それが開く事は無かった。
「………院長先生…？」
この部屋に閉じ込めたであろう人物の名を小さく呟いてみたけれど、返事はなかった。
近くに居ないのか、それとも違う人物が私をここに閉じ込めたのか。もう一度ドアノブを回しても、それが開く様子はない。
困ったな、と辺りを見渡す。せめてこの部屋の電気がつけば良いのだけれど。そうすれば見知った部屋なのかそうでないのかくらい判別が出来るのに。
…見覚えがない扉がある時点で見知った場所だとは思えないのだけど。
そのまま壁伝いに歩みを進めると、硬い何かが手に触れた。迷う事なくそれを押すと、豆電球に明かりが灯る。それもかなり心許なくて、部屋の全貌を知る事は出来なかったけれど…それでもその部屋はやっぱり私が見たことのない部屋だった。
「………何なの、ここ…」
悪戯にしては手が込みすぎている。
悪夢から覚めた筈なのに続いている悪夢に思わず項垂れた。
と、それと同時に足元に小さな鍵が落ちているのが目に入った。
錆びてはいないけれど、綺麗でもないそれ。ここで鍵を使うものといえば、先ほど開けられなかった扉しかない。
「……行くしか、ない、よね…？」
誰に問うでもなく呟く。
もしこれが誘拐だとしたら。扉の向こうに、犯人がいるかもしれない。
だけど、もし誘拐だとしたら、私が目が覚めてから自由に動けるようにしておくだろうか。そして、わざわざ見つけやすい場所に鍵を置いておくだろうか。
まだ何も分からない。
自分がどうなっているのかも、ここがどこなのかも、なぜ私がここにいるのかも。
それでも、この部屋でじっとしていてそれが解決するとは思えなかった。
ゆっくりと鍵穴に鍵を差し込んで右に捻る。ガチャリと鍵が開き、私はその部屋をあとにした。
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夕霧(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます！私の文章でリンタロウの可愛さやかっこよさを表現出来ているか自信がありませんでしたが、そのように言って頂けて本当に嬉しいです。書きたい事が多く遅々とした展開となっていますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2018年7月6日 23時) (
レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - あぁぁぁあー。リンタロウ可愛い！かっこいい！作者さん天才ですよね！？！？更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2018年7月6日 0時) (レス) id: ca55176d45 (このIDを非表示/違反報告)
akasiro814(プロフ) - ご指摘、ありがとうございました。オリジナルフラグを外しました。初めて使用するとはいえ、迷惑をかけてしまってすみません。今後、気をつけていきます。 (2018年7月1日 16時) (レス) id: 814c479c10 (このIDを非表示/違反報告)
@ - オリジナルフラグ外してねー編集画面を隅々までよく読んで (2018年7月1日 14時) (レス) id: da2bf38fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時雨 | 作成日時：2018年7月1日 14時
