１５：理想論の行く末 ページ15
しばらく廊下を進んだところで、突然ユキナリさんが止まった。どうしたんだろう、と問いかけようとユキナリさんを見れば、人差し指を唇に当てて「静かに…！」と小さな声で囁いた。
開きかけていた口を閉じて、暗がりを見る。よくよく見ればそこには微かに人影が見えた。
その人影は私達に気付いていないようで、廊下の奥をじっと見つめている。またそこに誰かいる、という事だろうか。それともただそこに佇んでいるだけなんだろうか。
どうしましょうか、とユキナリさんに小さく問いかける。
「…もしあれが…狼だとすれば……」
「…ターゲットを探してる？」
「可能性は高いね…もしここで誰が狼なのか確認出来れば…」
「狼を説得出来ますね！！」
「いや無理だよ！？もう行動を起こしてるんだから俺たちの言葉なんて聞くはずないよ！」
「じゃあ、私が殺されますからユキナリさんが説得してください！」
「それゲーム始まっちゃうし本末転倒だからね！？それにユウリさんだけ殺して狼が安心すると思う！？目撃者の俺も殺されるよ！」
「むぅ！？ええと、じゃあ…！」
「悪いけど説得する方向で考えるのは今はなし！ほら、あいつ凶器も持ってるんだし！」
よく見て！とユキナリさんが人影を指差す。目を凝らして見れば、確かにその人は何かしら凶器を持っているようだった。
…つまり、ゲームを始める覚悟が出来ている、という事だ。
また狼が誰かを殺してしまうのに、私はそれを見ているしか出来ない。狼が罪を犯すのを、指を咥えて見ているしか出来ないんだ。
どうして、と自分に問いかける。どうして私は自分で決めた事すら貫き通せないんだろう。どうして狼を救う事すら出来ないんだろう。
昨日だって理想論を掲げるだけで、誰も助けられなかった。
でも、と反論しようとして、ユキナリさんが首を振る。私達に出来る事は、狼の正体を探る事だけだと無言のうちに諭される。
それはどうしようもない真実で、私も心の奥底で分かっていた事だった。だから、反論することが出来ない。
「…納得出来ないかも知れないけど、受け入れられないかも知れないけど。今俺たちに出来ることは、俺たちが考えているよりもずっと少ないんだ」
「………」
「狼を救う事を諦めろって言うんじゃなくて…今はまだその時じゃない。それだけだよ」
じゃあ、その時っていつなんですか。八つ当たりのようにそう叫びそうになったけれど、どうにか抑え込む。
どう考えたって、ユキナリさんの言葉の方が正しかった。
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夕霧(プロフ) - みるくさん» コメントありがとうございます！初めから見てくださっていたとのこと、半年間も途絶えていたのに引き続き読んでくださってありがとうございます…！なるべく毎日更新していこうとおもっていますのでこれからもよろしくお願いします！ (2019年5月16日 22時) (
レス) id: 069354e7b4 (このIDを非表示/違反報告)
みるく - �気�ら見てますがとても面白いです！続きまってます♪ (2019年5月16日 7時) (レス) id: 1c94817be9 (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - ノワブラ−αさん» リクエストですか…してもらえたら嬉しいですね笑いつになるか分からないですが、参考にさせてもらいます！ (2019年5月11日 22時) (レス) id: 069354e7b4 (このIDを非表示/違反報告)
ノワブラ−α(プロフ) - あ、ネタはリクエストしてみてはどうですか？シチュエーションとかがわからない場合は少し書いてもらうとかもありかもですよ (2019年5月10日 21時) (レス) id: cf6ea17fd6 (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - ノワブラ−αさん» イタズラしてみた、とか、告白してみた、みたいな感じですかね？ネタがあればやってみます！（笑） (2019年5月9日 0時) (レス) id: 069354e7b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時雨 | 作成日時：2018年8月23日 21時
