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NOside
六人の中に、新たに一人が加わりまた声をかけだした。
しかし、面会の時間もとうに過ぎておりこれ以上ここに居ることは出来ない。
夜もずっと付き添っていたいが、夜が明けるとあの場に居なかった残党の処理や書類処理が待っている。
どちらにせよ、ずっと傍に付き添っていることは出来ないのだ。
皆、また来るからと声を掛けると病室を後にした。
一人になった病室には、呼吸をする音と機械音だけが響いていた。
翌日、今日は土曜日で朝から面会可能なため、風見は一度は仕事に戻ったものの、入院に必要な物を家へ取りに戻り、病院へ再び足を運んでいた。
もしかしたら、目覚めているかもしれないという希望を込め、戸をノックしたが声は帰ってこなかった。
目覚めていないことに少し落胆しながらも、戸を開けると先客がいたようだった。
風「いらしてたんですね、松田さん。あの後、自宅に戻られたようですが睡眠は取られましたか?」
松「…風見さんか。いや、寝れませんでしたよ…寝ようと思っても悪夢ばかりで…」
風「そうですか。ですが、Aが起きた時そんな顔をしていたら怒られてしまいますよ。
少しでもいいですから、寝て下さいね。」
松「俺を、責めないんですか…?俺を庇ってこんなことになったのに…」
風「松田さんを責めたところでAは目覚めてくれませんから。
…まだ仕事が残っているので、俺は戻りますね。Aの目が覚めたら連絡してください。」
松「はい…」
一日も経っていない筈なのに、酷くやつれた顔の松田に声を掛ける。
帰ってきた返事はいつもの覇気はなく、弱々しいものだった。
それも仕方がないと、風見は理解している。
彼は、妹であるAに好意を抱いている者の一人であり、その相手に自分は守られた。
その上、想い人は今も眠ったままなのだから。
本当は今すぐにでも責めてやりたい気持ちもある。
だが、そんなことをしてもAは目覚めないことを知っている。
だから、感情的になり松田のことを責めることはしなかったのだ。
風見が病室を出たあと、啜り泣く声が聞こえた
その声を聞こえないフリをし、風見は少しでも早くAに付き添えるように、仕事を片付けに戻った。
皆が、目覚めることを願っていてもAは目覚める様子がなかった。
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作者名:夜桜 | 作成日時:2020年4月3日 23時