義兄は私を嫌っている。Part2

第5話。 ページ18

パシュッ

田ノ浦くんが出てきて10分くらい経った頃、早速彼は得点を決めた。

「ぎゃーっ！！蓮くーん！！」

「カッコいい〜」

すごい大盛況。

田ノ浦くんってやっぱり大人気なんだな。

でも、もう私だけの彼ではない。

みんなが彼を好きでみんなが彼と付き合いたがっている。

「蓮のやつ、やっと調子出てきたわね。ほんっとうにわかりやすいわ。」

あやかさんは手すりに顎を乗せて安心したようにため息をついた。

あと一点…

あと一点取れば優勝だ。

田ノ浦くん頑張って…






時間は残り3分。

点差はなく同点。

「このまま行けばPKになるわね」

「PK？」

「あんた、そんな事も知らないの？PKっていうのは負けのことよ。蓮が負けるって事！！」

「え？え？…同点なのに？」

「そうよ！！だからあんたは前の方に行って蓮の名前呼んできなさいよ。」

私はこの時、サッカーのルールというものを知らず完全にあやかさんに騙されていた。

「ほら早く！！蓮がボール持ってるから！！大声出しなさいよ」

あやかさんはそういうと私の背中を思いっきり押した。

田ノ浦くん…

すごく恥ずかしいけど…

この思い、ちゃんとあなたに届けたい…

私は覚悟を決めて大きく息を吸った。



「「田ノ浦くん！！！頑張って！！」」



ふぅ…

こんなに大きな声出したの初めてだ。

周りを見てみると会場だけの人じゃなく選手まで一斉にこっちを見ていた。

私はその視線に耐えられず、下を向いてあやかさんの所に戻ろうとした…その時、

「ぎゃー！！！！！」

と割れるような歓声が会場に響いた。

うそ…

田ノ浦くんが決めた…

私は急いで前の方のフェンスにしがみついた。

田ノ浦くん、田ノ浦くん、田ノ浦くん…

本当に良かった。

彼が得点を決めて終わった決勝戦。

彼はたくさんの選手に囲まれていつも通り太陽のようなキラキラの笑顔で笑っていた。





「なに帰ろうとしてんの？蓮の所に行くよ」

「え？」

私が出口に向かおうとした時、あやかさんはそう言って私の手を引いた。

「え？じゃないわよ、お祝いしに行くの」

「無理だよ！！」

「無理じゃない！！ちゃんと自分の足で歩きなさいよ！！」

あやかさんは私の意見など聞くはずもなく半端、引きずる形でどんどん歩いて行く。

一体、どんな顔で会えばいいの？

彼は私の話なんか聞いてくれないよ…

彼に会うのが怖い…

彼に無視されたら私…きっと壊れちゃうよ…

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